海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
 逸見が亡くなって、早いもので今年は13回忌を迎えます。本当にいろいろな事が私の目の前を通り過ぎていきました。想像だにしない出来事が次から次へと起こりました。苦しみ悩み涙しながら乗り越えてきました。
 息子もすでに32歳。逸見が一番望んでいた大学を卒業することもでき、今、俳優を目指して孤軍奮闘しています。時間はサラリーマンが羨む程ありますから、様々な事に挑戦しています。ビートたけしさんの「良いものを自分の目で確かめなさい」との教えで映画のビデオを観たり、辺境地への取材も積極的に行っています。
 娘の愛の方がかなり振り構わずエネルギッシュに行動しています。今年でニューヨーク一人暮らし3年目です。ジャイアンツの松井秀喜君がニューヨークヤンキースに移籍したので、その取材レポーターを募集していることを耳にしました。アメリカでのオーデションのため、単身ニューヨークに渡り、見事その仕事を獲得しました。応募者が多数あったそうです。逸見が元気だったら人一倍喜んでくれたと思います。私もこの12年間で一番嬉出来事でした。最初テレビ出演の時は自分が出演するかの如くハラハラドキドキして、テレビにかじりついていました。知人、友人も後で話を聞くと、私と同様の心境だったようです。終わった後、ほっとしたものです。
 私はと言えば、逸見がガンの告知会見以来問題提起されたガン告知の問題、インフォームドコンセント、そして生活の質のことを考えながら生きるクオリティオブライフ、こんな3つの大きな問題をテーマに医療のあるべき本当の姿を考える体制を整えるべく精力的に講演で訴えています。そして、それらは患者さんの側から声を高らかに上げていかないと医療は旧態依然として変わっていかないことも身をもって訴え続けています。
 地方のどんな場所にお邪魔しても「私は逸見さんが大好きでした」「実直そうで楽しいお優しい人でしたね」と、未だにお年寄り、若い人皆がおほめの言葉、思い出の言葉をかけてくださいます。10年以上も昔の事なのについ昨日のことの如く涙を流して私の話を聞き入ってくださいます。嬉しい、ありがたいことです。
 1つの方法だけで治すのではなく、その人なりの治療ーオーダーメイドの治療の選択がベストであることも認識されるようになりました。これは逸見が先鞭をつけたと自負しています。そして、子どもたちも身近にガンになられた方がいらっしゃると相談にのってさしあげたり、いろいろと心配してよいアドバイスを求めています。私たちは、ガンから離れられなくなってしまいました。更に勉強してもっとたくさんの方々にガン治療の難しさ、大切さ、重要性をお話していきたいと考えています。
 ガン治療の1つに「生きがい療法」「メンタルケア」ともいいますが、そういうケアの仕方があります。私は、一昨年から「いっつ癒しの旅」と題して心のケアをサポートする旅の計画を実行しています。これはライフワークにしたいと思っています。

2000年8月にアメリカのガン患者さんと日本のガン患者さん、サポートチーム500人が富士山登頂に成功しました。私も同行し大感激しました。その体験をもとに何かできないかと考え、大自然を歩いてマイナスイオンを満喫する旅を計画しました。私が担当していた雑誌で募集しましたら、28人が応募してくださいました。そして、ガンになった方々に何を思ったか尋ねたら、「定年後の海外旅行を楽しみにしていたのに」「もう海外旅行も行けない」と夢の実現ができないと嘆く声が大でした。旅の一週間は、あっという間に終了し、落ち込んで誰とも目を合わせなかった人も日が経つにつれ目に輝きを増し、笑い顔で話すようになった方もいらっしゃいました。家族には話せない心の悩みも皆、同じ病を煩った仲間には素直な気持ちで打ち明けられる、心が開放されるのです。旅は、大成功を収めることができました。
 昨年はアンケートの中にフランスのルルドの泉へ行きたいとの要望がありました。この地は毎年全世界から500万人もの人が訪れる聖地なのです。30ヘクタールの広大な聖域に聖堂や教会、病院、宿泊施設を擁し難病が治ったり、奇跡が起こったりする場所です。メンタルケアサポートを実践していらっしゃる竹中文良先生に同行をお願いして23人が出発しました。ルルドは病人が主役なのです。車椅子の人は、赤く塗られた道路に優先的に通ることができます。
 沐浴では、ボランティアの方々がお手伝いしてくださり、泉の水へザボンと浸けてくれるのです。あっという間に衣服に身をくるみ元通りになって感動して、この場をあとにすることができました。夜のろうそく行列は讃美歌を歌いながら、ろうそくの灯りを見つめ世界の人々と等しく集うことで神聖な気持ちになり、神に近づいたかの如く癒された気持ちになりました。どれもこれも初体験で、生きていて良かったと思った瞬間でした。我々の一行の中には担当医から「末期、もう何もできない」と言われたNさん、そして再発のガンが腹膜に転移して痛みが出、主治医に相談したら「痛み止めを飲んで行きなさい」と言われたMさんがいました。その方々は旅の中で生き生きと表情を見せ、食べられなかったのにどんどん食べたりと回復をみせてくれました。 同じ病をもつ人々との旅は心を開放し、わかち合う喜びが元気という気力につながって、強い絆に結ばれたのではないかと思います。
 今年はベルギーへの旅の計画を準備しています。
 毎年、皆様と行動することで夢と希望を叶えることが生きている証になれば幸いと思います。病気はあっても病人にならず、人間としての感動を持ち続けたいと願っています。