海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 新人アナウンサーの頃、「インタビューとは、インターをビューすることだ」と教えてくれた先輩がいた。文字通り、人の内面を引き出すのがインタビューだ。本番で、これまで語られていないことが出て来たり、思わぬ一面が出たりすると嬉しくなる。一方、事前に集めた情報とほとんど同じ内容だったり、答えをはぐらかされたりすると、歯痒い思いをする。
 人見知りで、恥ずかしがりゆえに、なかなか本音を語らない人気脚本家の三谷幸喜さんには、かねてからインタビューしたいと願っていた。三谷さんの本音にどこまで迫れるか試してみたかったのだ。

 ニュー大河

 三谷さんが手掛ける大河ドラマ『新撰組!』は、これまでの大河のイメージを変えたといえる。大河というと、ベテランを配し、重厚というイメージがあったが、今回は、出演者も全体的に若く、新しい大河というイメージがある。テレビであまり見かけない小劇場系の役者さんが、こんなに出ている大河は珍しい。彼らの未知のパワーが、幕末という時代を描くのに合っている。実際の新撰組も若い集団だったのだから、違和感はないはずだと、三谷さんは考えた。
 三谷さんは、とにかく大河ドラマが子どもの頃から好きだった。最初に見たのが昭和47年の『新・平家物語』。翌年の『国盗り物語』からは毎週、家族そろって見ていた。ドラマが始まるまでに、すべての用事を切り上げて、テレビの前に集まった。放送中、私語は禁止、受話器も外して集中していた。
 だから大河ドラマの脚本を書くのは夢だった。子どものころ、ワクワクしながら見ていた気分を伝えたいと思っていた。自分が書くなら、歴史の勉強というより、続きが見たくてたまらない波瀾万丈な大河にしたいと思っていた。

 三谷幸喜さんは、1961(昭和36)年の東京生まれ。1983年、日本大学在学中に、劇団「東京サンシャインボーイズ」を結成。1994年に、劇団を解散した後は、脚本家として次々ヒット作を生み出している。ドラマでは、『王様のレストラン』『古畑任三郎』『今夜、宇宙の片隅で』。舞台では『オケピ!』『12人の優しい日本人』『彦馬がゆく』。映画では、『ラヂオの時間』『みんなの家』など枚挙に暇がない。
 そんな三谷さんが、念願の大河の脚本を依頼されたとき、迷わず題材に新撰組を選んだ。庶民感覚があり、時代も近いので、自分の感覚で書けると思った。新撰組を結成した思いが、自分が劇団を旗揚げしたときの思いにも重なった。
 『新撰組!』は、近藤勇、土方歳三、沖田総司、斉藤一、藤堂平助、原田左之助、山南敬助、永倉新八、井上源三郎の9人の群像劇として描かれている。俯瞰で時代を見ないで、目線を下げてその時代の息吹を感じるように心掛けている。9人それぞれのエピソードを絡めながら、一話で一日を描く方式を取っているが、そのほうが日常の空気感がより出やすいと考えたからだ。

 

 ただ困ったことが1つあった。仲間の粛清というようなドロドロした部分は、いままで書いたことがない。死を描くことに抵抗があった。斬り合いは、極力少なくした。
 死を軽く考えたくない。斬られるまでの過程を丁寧に描くようにした。死の重さを表現するには、それが大切なことだ。危険で粗野なだけでなく、哀しい性を持った芹沢鴨の最期には、それがよく出ていた。大好きな酒の入った徳利にけつまづいて死ぬシーンは印象に残っている。
 一人一人への思い入れも強いから、死ぬシーンは辛い。芹沢鴨や山南敬助の最期を書いた後は、身近な人が死んだようで、しばらく落ち込んだ。悪役、敵役、裏切り者と言われる人々に注ぐまなざしが温かい。

 一人っ子同士

 三谷さんも私も、一人っ子だ。目立ちたいのに、素直に示せないところがある。ほめてもらうと嬉しいのに、素直に喜べないところがある。一人っ子は複雑な心境なのだ。話を聞いていて、三谷さんのことが我がことのように思えるときがあった。
 で、勢い込んでインタビューしたものの、結果はどうだったのか。インタビューしている間、三谷さんにずっと、観察されているような気がしていた。油断も隙も見せてはならじと気を張っていた。だから、録音を後で聞いてみると、かなりテンションが高い。付け入られまいと、テンポが早い。上ずっている。いささか自己嫌悪に陥った。
 三谷さんに脚本作りの抱負を聞くと「期待を裏切らず、予想を裏切りたい」という答えが帰ってきた。この言葉には、自信も伺えるが、茶目っ気も潜んでいるように思う。インタビューも、期待通りの面白さでもあったし、ああもしたいこうもしたいと予想を立てて、意気込んでいた自分が肩透かしにあったようでもあった。

 三谷さんは、「勝ち組、負け組で言うと、負け組が好きだ」そうだ。敗者の美学、格好よさ、不思議なおかしみをもった負け組にひかれるものがあるという。
 『新撰組!』の最終回。近藤勇に言わせる最期のせりふは、ずいぶん前から考えてあったという。どんなことを口にするのか、今から楽しみだ。期待は裏切られず、予想は裏切られることだろう。

■村上信夫プロフィール
1953年、京都生まれ
明治学院大学卒業後、1977年 、NHK入局。富山・山口・名古屋・東京・大阪に勤務。
2001年6月より東京ラジオセンター勤務。「きょうも元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)担当。
これまで「おはよう日本」「ニュース7」「BS将棋中継」などを担当。
名古屋時代、「お母さんの勉強室」「育児カレンダー」を担当。以来、教育や育児に関する問題に関心を寄せている。
父親たちの社会活動グループ「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋、ピアノ。
「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)

■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画とは
「日本画の一つ、俳味のある酒脱な略筆の淡彩もしくは墨絵で賛などしたものが多い」
(広辞苑)

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