海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

バッテリー生みの親
 中学生の野球少年たちを描いた小説『バッテリー』が受けに受けている。映画化もされ、大人も子どもも夢中になっている。作者は、岡山県美作市に住むあさのあつこさん。歯科医の夫を支え、3人の子どもを育てた《ふつうの主婦》がミリオンセラー作家となった。

 物語は、孤独な天才ピッチャー巧と、彼の球も心も受け止める心優しきキャッチャー豪の友情が軸だ。舞台は、中国山地の小都市。「大都市に生きていたら、ああいう少年たちは書けないだろう」「昔の記憶と、犬を連れて散歩するいまの風景が、物語を紡ぎ出すもとになっている」

 主人公の原田巧は、中学生だが豪速球を投げるピッチャーだ。球の速さも性格もとてつもない。媚びない。妥協しない。囚われない。囲われない。縛られない。つなぎとめられない。他人の人生すら変えてしまう。自己中心的と見られがちだが、あさのさんが「親や周囲の人々に、自分の思いを貫き通せる人であってほしい」と願いを込めたキャラクターなのだ。
 「13歳だって、自分の将来を夢見る!」「本気で向かってこい。子どもだとか小学生だとか、中学生だとか、関係ないこと全部捨てて」と巧には、大人と子どもの境界線はない。巧を描きながら、「子どもを侮ってはいけない!少年の可能性はすごい!」とあさのさんは思う。
 真っすぐな巧に教えられたことも多い。「自分の弛緩を実感した。誰も傷つけない代わりに、自分も傷つかない萎えた言葉を撒き散らしていいのか!抗う力を取り戻したいと思った。自分の言葉を取り戻したいと思った」

 ピッチャーとキャッチャーというバッテリーという設定にした理由は明確だ。「集団スポーツの中で、一対一で向き合う関係性が面白いと思った。真剣に人と人が向かい合ったとき、何が生まれ何が変わるか知りたいと思った」
 主人公の巧には、中学時代の自分を投影させている。「子どものくせに」と片付ける大人が嫌いだった。大人たちを拒む気持が芽生えた。でも、巧みたいにストレートに言えなかった。その不満を解消するため、書いている。
 一昨年、10年かかって全6巻のシリーズが完結した。しかしまだ、書き切れていないことがある。あさのさんは、いずれ続編をと思っている。

伝えたいこと
 あさのさんは、昭和29年生まれ。子どもたちは巣立ち、いまは、夫と二人暮らし。家事や犬の散歩のかたわら、台所書斎で執筆をする日々は変わらない。
 中学生の時、日記をつけ出した。途中から架空の物語になった。書きながら自分を発見する面白さに、作家になりたいと思った。しかし、「勉強もスポーツもだめで、劣等感の固まりだった」

 そんな中、「俺はお前の文章が好きだ」とほめてくれた先生がいた。それがすごい自信になった。子どもの才能を伸ばすには子どもの夢中になっていることに共感してくれる大人が必要だ。
 東京の大学に進み、、児童文学サークルに入った。しかしそのまま文章を生業にしたわけではない。大学を卒業後は、岡山市の小学校で講師を務めた。25歳で故郷に帰り、結婚してからは、家事育児に追われ、執筆どころではなかった。
 作家デビューの機会がやってきたのは、子育てが一段落した36歳の時だった。自分の中に「何がしたいのか」と声が聞こえてきた。妻でも母でもない自分自身を表現するには、書くしかなかった。そして、着々と頭角を現し、大ヒット作『バッテリー』が生まれるに至る。

 あさのさんの描く作品の多くに、10代の少年少女たちが登場する。「危うさ、もろさもあるが、変化が目覚ましい時期だから面白い!」少年犯罪が起きるたびに、画一的な少年少女像をマスコミは描く。そのアンチテーゼとして書き続けているという側面もある。
 あさのさんは、児童文学を書くことで、子どもたちの代弁者でありたいと思っている。
 「自分の書くものは、子どもたちに希望を語れるものにしたい。スポットライトが当たらない場所に、思いを届かせていきたい」
 「子どもたちには、もどかしさを抱きながらでも、まっすぐでいてほしい。生きていれば、何かが変わる可能性がある。人に委ねた時点で、夢は夢でなくなる。自分の夢に責任持って!」
 そして、羨望や嫉妬は、けっして悪いことではないと、魔法のような言葉を最後に教えてくれた。「羨望は生きる原動力に、嫉妬は相手を認める力に、心の傷はやがて思い出に変わる」

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)
「元気のでてくる"ことばたち"」
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おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
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「言えなかったありがとう」
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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

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