海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 俳優の滝田栄さんは、ご本人の言葉を借りれば「過激なくらい頑張る」人だ。1メートル85センチと大柄な滝田さんだが、その生き方も、スケールが大きく、エネルギッシュだ。役作りはもとより、座禅、仏像彫刻、発展途上国への援助活動…何事にもひたむきに取り組むのが滝田さんの真骨頂だ。

役作りに頑張る
 長野県原村、八ヶ岳の麓に暮らしの拠点を移して27年。小学生の頃から、趣味である登山でよく来ていたところだ。都会より居心地がいい。「気持ちを自然の清々しさに合わせる」と、一日快適に過ごせる。

 長野県原村、八ヶ岳の麓に暮らしの拠点を移して27年。小学生の頃から、趣味である登山でよく来ていたところだ。都会より居心地がいい。「気持ちを自然の清々しさに合わせる」と、一日快適に過ごせる。
 冬はかなり厳しい寒さに見舞われるが、そんなときでも水浴びをして、座禅で呼吸を整え、お経を唱え、仏を彫る。頑張る人なのだ。
 「不器用だから頑張らないと出来ない。その代わり、一つのことを徹底してやると、人には真似出来ないことが生まれる」と、どんなことにも手を抜かない。

 大河ドラマ『徳川家康』の役作りのエピソードもよく知られている話だ。主演が決まったものの、どう演じていいのかわからなくなり、「大河ドラマ史上初の主役失踪になるか」と思い詰めていた。
 暗中模索するうち、家康が人質生活を送った静岡の臨済寺に頼み込んで修行をすることにした。修行しても、何も見えてこない。焦る心を見抜いた寺の老師が、釈迦の涅槃図を見せてくれた。すべての生き物が釈迦の死を嘆いている絵だ。老師は、「若き家康を導いた雪斎禅師は、この涅槃図を見せながら、仏陀の心で、この世を浄土にと、説いたのではないか」と教えてくれた。語らいの中で、滝田さんは「徳川家康は、戦国大名たちの私利私欲の戦を終わらせるためにこの世に現れたのだ」と悟った。家康は、たぬき親父ではなかった。
 14年間、およそ1500回の舞台を踏んだ『レ・ミゼラブル』に対しても、「一回一回、死力を尽くす格闘家の心境で臨んでいた」。滝田さん演じる主人公のジャンバルジャンは、貧困のあまりパンを盗んで刑に服するが、「生まれ変わり、正直な人になれ」と司教に諭され、心を入れ替える。素晴らしい人間ドラマを演じてきた自分が役を離れることになったとき、素の自分はいったいどんな人間なのか、もう一度問い直したくなった。

 『レ・ミゼラブル』千秋楽の翌日に、滝田さんは人知れず、インドに向けて旅立つ。2年にわたって、瞑想と座禅でひたすら自分と向き合う日々を送る。インドでの2年間の修行で何がわかったのか聞いてみた。しばらく間があってのち、大きな声で「大発見をしたんです。俺は馬鹿だなぁ〜ってことがわかったんですよ」。2年もかけてようやく自分が馬鹿だとわかるのはすごい悟りだと、友人の一人に言われた。「自分と向き合うのは面白かった」と嬉しそうに語る。見栄が消え、虚飾が取れ、楽になったからだろう。

仏像彫刻に頑張る
 仏像を彫る最初のきっかけは、1992年に亡くなった母への感謝の気持ちからだ。母のために、観音菩薩を彫った。彫刻刀を握りながら、心臓に病を抱えているにも関わらず、命懸けで産んでくれた母への思いが募った。母は、医師に止められたが、お不動さんに願かけして出産に挑んだのだった。
 滝田さんは、千葉県印西町(いんざいまち)で、4人兄弟の末っ子として生まれた。両親が仏壇に、花と水を供え、線香をたて、合掌する姿を見て育った。
 小学校、中学校、高校と、それぞれに山登りの好きな先生がいて、すっかり登山好きになった。本気で、アルプスの山岳ガイドに憧れた。スイスの公用語の一つフランス語を学ぼうと、中央大学仏文科へ進む。
 しかし、学生運動で大学はロックアウトの連続。空き時間に見た映画『アラビアのロレンス』が人生を変えた。映画の感想を熱く語っていると、友人が俳優になることを勧めてくれた。「君のタイプは文学座」と友人がさっさと応募の作文を書いてくれた。それが俳優への扉が開かれたきっかけだった。

 滝田さんの兄は、千葉県の成田高校陸上部の監督として、マラソンの増田明美さん、ハンマー投げの室伏広治さんを育てた。兄は、まだ駆け出しの頃、舞台のチケットを売りさばいて応援してくれた。役作りのトレーニングメニューを組んでくれたこともある。その兄がガンに罹り、55歳で突然逝ってしまった。
 兄への供養には、等身大の不動明王を彫った。胸板が厚くマッチョな不動明王。後ろから伸びる長く太い髪。「馬鹿者!」と一喝されそうな怖い顔をしている。

ボランティアも頑張る
 1991年から、発展途上国への援助ボランティアも続けている。イギリスのNGO《フォスタープラン》の評議員をしている。子どもたちが、安全で確実に成長出来る地域を作るための資金援助をするボランティアだ。その地域の文化を壊さないように意識して、ただ単に資金提供するのではなく、生きていくのに必要な食べ物の作り方を教える。
 援助国のフィリピンや、ベトナムの子と文通もしている。地域がどのように様変わりしているのか、どんな援助を望んでいるのか尋ねたり、日本や世界の情勢を伝えたりしている。一昨年、ベトナムを訪問した。中国国境に近いバグザンというところだ。ドイモイから取り残された少数民族が住む。そこでは、キノコ作りが成功して、学校や病院などの施設も作ることが出来た。10年で何が変わったか土地の人に聞いたら、「子どもが国の未来であることがわかった」と答えが返ってきた。「自分たちのエゴを通すために、子どもをないがしろにすることの多い先進国の大人たちに聞かせたい。」

 言葉がほとばしる。言葉に魂が宿っている。自分を語るときも頑張る。真剣に生きる滝田さんと接しているうちに、とても清々しい気持ちになった。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

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1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

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