海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

だんだんの父

 朝の連続テレビ小説『だんだん』。めぐみとのぞみの双子姉妹は、念願の歌手として成功を収めるのか、二人のこれからが注目されるところだ。
 主人公めぐみとのぞみの双子姉妹の父は、松江・宍道湖でシジミ漁師をしている田島忠。プロボクサーになりたくて大阪に出たものの夢破れ、挫折。京都で舞妓をしていた一条真喜子と結婚し、双子が生まれるが離婚。めぐみを連れて松江に帰り、漁師を継ぐ。幼馴染の嘉子(よしこ)と再婚するが、多くを語らず、過去の一切を封印して生きてきた。

だが、めぐみとのぞみが再会したことで、忠の心にも変化が起きるという筋立てだ。その田島忠を演じているのが、俳優の吉田栄作さんだ。かつてのトレンディードラマ時代からは想像出来ない配役だ。
 役柄は、無骨で、不器用で、ほとんど笑わない。吉田さんは、「置き去りにした夢があるという点で、自分と共感することがある」と思っている。ボクシングに対する情熱の炎が消せなかった忠が、音楽に対する自分の思いとダブる。
 劇中、忠はエネルギー源として「しじみカレー」をよく食べる。吉田さん自身も、テスト、リハ、本番と、本気で3杯たいらげる。ちなみに吉田さんもカレー歴は30年に及ぶ。「僕の作るカレーは世界一うまいよ!」と公言してはばからない。カレールーには、赤味噌も入れれば、酒も、チョコまでも…いろんな材料をとっかえひっかえ、長年の試行錯誤は今も続く。

 娘たちの歌手になりたいという夢への迷いを断ち切るため、命をかけて戦っていた若き日の姿を見せようと、父の忠がボクシングに挑むシーンは、ドラマ前半の見せ場だった。このシーンのために、去年2月から、吉田さんは、週1回ずっとトレーニングと減量を続けていた。練習中、心拍数が210まで上がり死ぬかと思ったそうだ。
 シジミ漁師である忠の必殺パンチ「ジョレンアッパー」は、吉田さんのアイデアだ。シジミ漁の漁具ジョレン(鉄製のかご)を使うと左手が鍛えられる。引き上げる時、左腕がアッパーを打つような格好になる。そこからヒントを得た。対戦相手のパンチを顔面にうけて、大の字に倒れるシーンでは、意識的にガードを下げ、リアルさを追求した。「燃え尽きたい、出し切りたい」という性分は、昔から変わらない。

一時休業が変えた

 1969年、神奈川県秦野市の生まれ。182センチの長身だ。「栄作」という名は総理大臣の名前から父がつけた。ちなみに父は武夫。兄は信康(信長+家康)。
 4歳上の兄の部屋で、映画やロック、片岡義男の小説に浸った。バスケットボールにも熱中した。これも兄に続けで始めた。ずっと兄のおっかけをしていた。
 高校時代には、バンドを結成して、ボーカルを担当していた。後に歌手としてNHK 紅白歌合戦にも2度出場している。
 「大きな賭けをしてみたい」という気持ちで役者への道を志す。1988年の「ナイスガイ・コンテスト」でグランプリ獲得。いわゆるイケメン俳優のハシリとして、トレンディードラマの常連となる。
 「10代の頃は、自分がほしいと思うものを全て手に入れれば、悩みなんかない世界が待っている」と思っていた。「いきがっていた」。
 20代前半。体力の限界に挑み、自分の弱さとも戦った。俳優になるのも、有名になるのも自分が望んでいたことだったが、想像とは違った。自分を強く見せることに疲れ、心身ともにボロボロになった。
 26歳、人気絶頂期の1995年に芸能界を一時休業。これを彼は「野心的休業」と呼んでいる。「いま思うと、いいタイミングだった」
 役者修業のためにロサンゼルスへ向かう。本を読み、映画を観て、ボイストレーニング、英語で演技のレッスン、テニス、サーフィン…。
 燃え尽きたかと思っていたが、種火が消えていないことがわかった。好きな時に好きな場所で好きな音楽を自然にやる人たちを見て触発された。「人目を気にせずに生きればいいと気づき、楽になった」
 1998年帰国。『大地の子』の演出で知られる敏腕の岡崎栄ディレクターに請われ、NHK ドラマ『流通戦争』に出演。翌99年の大河『元禄繚乱』、03年の大河『武蔵』など、復帰後はNHK づいていた。演じるたびに、一皮も二皮も剥けていった。
 去年は俳優活動20周年。今年は、歌手活動を始めてから20年。シングル17枚、アルバム8枚リリースした実績もある。95年に、香港、台湾、東京のアジアツアーで2万人動員したこともある。
 このところは、マイペースで音楽制作を続けてきた。2004年には、8年ぶりに都内のライブハウスで、ファン100人ほど集めた公演を開催し、以来、毎年1回夏の恒例にしている。一昨年、12年ぶりのリリースとなるミニアルバムを限定発売した。ロサンゼルスのアパートで作った曲たちを集めたものだ。今年あたりから、そろそろ歌にも力を入れていきたいと思っている。

 今年1月3日で、40歳になった。誕生日前夜には、恒例の儀式がある。寒風の中を、次の1年に思いを馳せながら走るのだ。不惑の年、吉田さんは、「表現者としての成人」を迎えたと考えている。どんな成人としての表現を見せてくれるのか楽しみでたまらない。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)
「言えなかったありがとう」
好評発売中

■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

イネ・セイミ

 堀江実のポエムコンサートをCDでお届けします。

  詩と朗読
  フルート
  ピアノ
  構 成

  Disk1
  Disk2
 堀江実
 イネ・セイミ
 はちまん正人
 佐藤よりこ

 光のように
 花のように

 言霊に癒されるCD堀江実のポエムガーデン
 やさしい風がふいています。
 木々の梢は光っています。
 あなたの心がやすらぎで満たされますように。
 あなたの心に喜びがあふれますように。

2003年10月22日発売 CD2枚組 3,150円(税込み)