海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

33歳にして2つの人生
 1冊の本がある。『親のようにならないが夢だった』。サブタイトルが、裏社会から這い上がった経営者の人生大逆転物語。タイトルはセンセーショナルだが、本の表紙の写真は、著書とおぼしき青年が、縁側でにこやかにたたずんでいる。
 著者の名は、加藤秀視(しゅうし)。そのギャップに戸惑いつつ、著者のプロフィールを見ると、これまた驚く。「幼い頃、酒乱の父が母に暴力を振るうのを見て育ち、小学校2年で、煙草を吸い始め、4年生で番長。中学3年で暴走族のリーダー。ドラッグ、傷害、恐喝と、いわば悪の限りを尽くし、高校はわずか4カ月で中退。その後、裏社会に入り、暴走行為で2回の逮捕を経験」。

 しかし、ここからが人生大逆転物語。22歳で一念発起して、裏社会と決別して、建設業を立ち上げ、多くのトラブルを乗り越え、社会的信用を得る会社に育て上げた。現在は、壮絶な体験を語りながら、人材育成や、非行少年の更生に力を尽くしている。

 33歳にして2つの人生を生きている。裏と表。反社会的行為と社会的行為。やることなすこと正反対。真逆を生きている。孤独な日々の10代は、暴力で人を操り、権力を手に入れることが幸せの道と思っていた。生まれ変われた20代は、幾つものつまずきを経て、人を愛することを知った。夢作りに勤しむ30代は、多くの子どもたちの苦しみを解放し、夢が持てる環境作りに勤しんでいる。
 ことあるごとに「必ず人は変われる」と言う。過去は変えられなくても、未来は変えられる。自分に飽きない人生を続けるため、自分を試し続けている。

 いま熱心に取り組んでいるのは、人材育成だ。暴走族仲間8人とスコップ1本から立ち上げた「建設会社」は、公共事業の受注も得て、10年連続の増収増益だ。社長は、後輩に譲り、自分は会長になり、企業研修を始め、様々な場で人材育成をメインの仕事にしている。

 加藤さんのところには、更生を求めて、親に連れられた少年少女が訪ねてくる。かつての自分を重ね合わせて、アドバイスをする。まず「仲間や親の大切さがわかるか」聞くようにしている。たいてい「わかる」という。ならば「自分の好きなようにやっていい」と。「とことん突っ張れ」と。親や仲間への気持ちがあれば、いずれ必ず戻ってくる。その子が自分で見つけた必要な「何か」は、生きていく上で貴重な礎になるはずだから。「何を大切に生きたらいいのか気づいた時が変われるときだ」というのだ。
 憎しみや自分勝手な心といった悪いガソリンだとエンジンが壊れるが、人の役に立ちたいとか、感謝したいという良いガソリンだと、長く走れる。「かつてのボクは、エンストしてばかり。家族や仲間の愛というガソリンが、いまのボクを動かしている」。

4つのミッション
 加藤さん曰く、「絶対達成する意志で取り組んでいる4つのミッション」がある。
 まず《行政機関による矯正保護を終えて釈放された少年少女の再犯率をゼロにすること》。自分の経験上、少年少女の犯罪要因として、「健全な自己欲求の満たし方」がわかっていない。矛先が違うのだ。ただ、大人は、彼らに対して頭ごなしの批判をするのではなく、良き人間関係を築き、力のベクトルを闇から光へ、悪から正しい方向へ向ける環境作りをしてやるべきだ。保護司の資格を申請して、全国の刑務所や少年院などを回り、再犯率ゼロを目指す。
 次に《自己啓発のノウハウを、教育現場に無償で提供すること》。5年間で2、000万円あまりの投資で学んだ能力開発、自己啓発を改良して、無償提供している。心、食、家族愛、感謝の心、経済力、人間力、夢の叶え方…。
 あちこちから講演会の依頼がくる。小・中学校では、「夢を持って生きる」ことを力説する。イヤだなといったマイナス感情を抑え、自分の目標を持てば、自分も周囲も大切にして生きていくことが出来るようになる。
 高校生には、薬物の怖さ、その後遺症の怖さ、立ち直るまでの難しさなど実体験を交えて訴える。大学生には、社会的使命を説く。「使命とは、命を使うことだよ」と。
 教職員やPTA関係者の集まりでは、「大人と子どもの重要な関係性」を話す。「時に、真剣に子どもに向き合っているのか!子どもから逃げていないか!」と語気を強めることもある。「ボクは大人の顔色を気にして生きてきた。両親の愛に飢えていた」。
 だからこそ「話を聞いてくれる大人」の必要性を感じる。
 そして《日本の自殺者をゼロにすること》自分も裏社会から抜け出せず、死のうと思ったことがある。32、000人を超える自殺者を2年間で15、000人に半減し、ゆくゆくはゼロにしたいと思っている。親子が愛と絆を取り戻す体験合宿も実施している。
 最後に、《社会起業家の育成に尽力すること》社会起業家とは、「右手にビジネス、左手に社会貢献」この2つが融合出来ている人のことを指す。社会力、人間力、経済力のあるリーダー30、000人を5年のうちに養成する。

 信念として「良い種を蒔けば、良い実を結ぶ」という思いがある。外見や振る舞い、言葉遣いを変えていくと、中身まで変わっていくようだ。
 とにかく「人は変われる」。正直、また裏社会へ戻るかもしれない。トラブルが起きるかもしれないと怯えていたこともある。だが、講演を重ね、人前で語る機会が増えていく中で、「誰かの役に立っていること」を実感した。不安は消えていった。更生の相談に乗っていても、自分のエゴでアドバイスしていないか不安になることがある。だが、その不安と戦うことも大事なことだ。「トラブルやアクシデントも、悲劇の顔をしたチャンスだ」と思えばいい。
 加藤さんの夢も変わってきた。「親のようになりたくない」から「自分のような思いの子どもを減らしたい」になり、「人生につまずいても自分の足で歩ける人を育てたい」と膨らんでいる。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)
「言えなかったありがとう」
好評発売中

■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

イネ・セイミ

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