海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 ご存じ、世界的なデザイナー、コシノジュンコさん。19歳で新人デザイナーの登竜門とされる「装苑賞」を受賞して鮮烈デビュー。その斬新なデザインで60〜70年代は「サイケの女王」とも呼ばれた。1978年パリ・コレクションに初参加。その後もニューヨークや北京など、世界各国でショーを開くなど幅広い活動を展開してきた。
 NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』は、ジュンコさんの母、小篠綾子さんをモデルにしたドラマだ。ドラマは、ヒロイン役を夏木マリさんにバトンタッチして最終盤に入ったところだ。

 ジュンコさんは、毎朝、欠かさず見ている。スケジュールも、ドラマに合わせて組んでいる。ブラジルに去年11月末に行ったが、かの地でもドラマは大人気だったとご満悦だ。
 「おかあちゃん」自身が、朝ドラのモデルになりたいと言いながら、毎朝見るのが日課だった。本気で思って行動していれば、夢は実現出来ると、テレビ画面に釘付けになりながら、ジュンコさんは思う。

 「おかあちゃん」は、呉服商の長女として生まれ、洋服に憧れて21歳で洋装店を開業。夫が戦死した後、女手ひとつで店を経営しながら、3姉妹を世界的なデザイナーに育て上げた。働き者のおかあちゃんは、ヒロイン糸子のモデルだ。持ち前の明るさと馬力でデザイナーという道を全力疾走で駆け抜け、2006年、92歳でその生涯を全うした。
 おかあちゃんは、岸和田名物「だんじり」そのもの。曲がり角であろうと、全力疾走で駆け抜けた。周りを振り回しながらも、みんなから愛され、誰からも「おかあちゃん」と慕われた。
 「ドラマの糸子(尾野真千子さん)は、とても魅力的だった。おかあちゃんそっくりや」と言いながら、3姉妹で、性格、行動、考え方いずれも、いちばん、おかあちゃん似だと自負する。それは、おかあちゃんも認めていた。

 おかあちゃんからもらった言葉の数々は、今もジュンコさんを励まし、叱り、時には優しく包んでくれる。
 おかあちゃんが事あるごとに口にしていた言葉に、『人生、これからや!』がある。80代くらいから、よく言っていた。何でも、見たい、行きたい、食べたい!
 『向こう岸、見ているだけでは渡れない』とも言っていた。向こう岸には何があるのかと、まずは好奇心を持つこと。そして「いつか渡ってみたい」と求め続けること。渡るためには、知恵と工夫を重ね、準備をしておくことだ。
 ジュンコさんが団長を務める神楽坂女声合唱団に、おかあちゃんは、90歳で入団。月2回、岸和田から東京まで練習に通っていた。
 『好き心(すきごころ)がはじまり』おかあちゃんは、幼いころミシンに憧れて、ついに一生の仕事にした。幼いころ、ジュンコさんは、「おかあちゃん」のお店にごろごろ転がっていた生地を巻く「巻板」を使った遊びが大好きだった。それを使ってのお店ごっこが、ジュンコデザインの原点かもしれない。
 なんでもかんでも、うまくこなそうとしなくてもいい。ひとつ自分の好きなことだけに的を絞って集中すれば道は開く。食わずぎらいはアカン。何事もまずはやってみることだと教えられた。
 『人はそれぞれ自己流がええねん』この言葉は、一生を通じて、おかあちゃんの持論だった。見よう見まねで、洋服づくりを覚えて洋裁店の先駆者になった。正真正銘の自己流の人だが、自分勝手に何でもやるという意味ではない。基本を学び、技術を身につけてのこと。おかあちゃんは勉強家だった。
 『もらうより与えるほうが得やで』どんな人にも見返りを期待せず、人が喜ぶ顔見たさでサービスするのが、おかあちゃん。ギブ&ギブ。その精神を自分も受け継いでいる。人にしてもらうより、してあげるほうが、自分の幸せにつながる。
 聖書にも「汝の隣人を愛せよ」とある。三姉妹はすでに洗礼を受けていたが、後におかあちゃんも教会についてきて、「うちも受けるわ」と、唐突に洗礼を受けた。
 晩年の3年間、おかあちゃんは毎日欠かさず、日記をつけていた。その中に「受くるより、与うるが幸いなり」とあった。おかあちゃんが亡くなってからも、お礼に来る人が後を絶たない。
 日記には、『人間、死ぬにも頃合いがある』とも記していた。人間、期限が切れたら、そのときが完成。ジュンコさんも、頃合いが来るまで、精一杯、ガンバルつもりだ。誰にも看取らせず一人で死んだおかあちゃんの生き方も死に方も真似たいものだ。
 過去は過去。昔は昔。いちいち喜びや成功に浸っていたら、次の1歩が遅れてしまう。いつも新たなスタートラインを追い続けていた。
 大切なのは、「いま」と「これから」。過去のことを言い出すのはおかあちゃんが一番キライなことだった。思い出に生きているのではない。いまを生きている!ジュンコさんも同感だ。「きょうの自分が一番若い」のだと思う。

 おかあちゃんが、亡くなって2ケ月後に生まれた孫娘の名は、おかあちゃんの名から一字もらい「綾」。好奇心の固まりで、おかあちゃんそっくりだ。甘いものより、しょっぱいものが好き。カラスミにも興味を示す。重い荷物を持っても「軽いよ」と意地を張る。そして、「大きくなったら、ジュンコみたいな仕事する」とジュンコばあばを喜ばせる。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

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おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

イネ・セイミ

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