海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

佳き「気」が流れる店
 今やメディアに引っぱりだこの人気料理人、青山有紀さん。
 昭和49年、京都市生まれ。東京・中目黒で京おばんざいと韓国料理を提供する店「青家」のオーナーシェフとして料理をふるまうほか、薬膳料理やスイーツも開発し、テレビや雑誌にもよく登場している。国立北京中医薬大学日本校で、国際中医薬膳師の資格も取得した。

 青山さんの店に入ったとたん、どこかホッとするような、すごくいい「気」が流れていると感じた。そのことを言うと、青山さんは我が意を得たりという顔をして、「薬膳の勉強をしたせいもありますが、味だけでなくお客さまへの思いとか店の雰囲気とか、目に見えない「気」を大切にしているんです」。「料理の味は思い出せなくても、おいしいと感じた気持ちや食事したときの雰囲気ってずっと覚えているものでしょう。もちろん、料理には薬膳の理念を取り入れ、自然農法の米や旬の野菜など厳選した食材にこだわって、お客さんのお顔を思い浮かべながら作っています」と、清々しい表情で語った。
 青山さん自身からも、佳き「気」が流れていたせいか、気持ちのいい対談の時間だった。
 「気」は醸し出されるもの。食材の声を聴き、味わう人の感性を汲み取れるから、自分の想いをさりげなく醸し出せるのだろう。

姉が遺してくれたこと
 青山さんには、自分を大きく変えた分岐点があった。それは、姉の純子さんが、6年前、27歳の若さで亡くなったことだった。
 青山さんは、生まれた京都に25歳まで住んでいた。姉が飲食店を始めたので、一か月くらい手伝うつもりで東京に来たのだが、そのまま居続けて10年あまりになった。

 店がオープンしたばかりの一か月後、姉に乳がんが見つかった。しかも末期だと告げられた。結局、その店は手放すことになり、姉が有紀さんのために、今の店となる家を見つけてくれた。姉の店を手伝ううちに、自分も店をもちたいと考えるようになった青山さんは、自分の「夢日記」をつけていた。「目黒区青葉台一丁目の一軒家で、おばんざいを出して」と夢日記に書いたことが、そのまま現実になった。

 料理学校に通ったわけではない。京都で料理店を営んでいた母は、家族のためにも手料理を拵えてくれた。おやつも全部手作りだった。自分なりに、母の味を思い出しながら作った。舌が覚えていたのだ。母の作った料理の記憶が、いまの自分を支えてくれた。
 「母親が子どもに何を食べさせてきたかは、すごく大切なこと。体の細胞が覚えている。味の記憶もあるけど、自分が大切に育てられてきたという思い出もすべて含まれているように思うんです」
 「お母さんたちからしてみると、子どもの好き嫌いをなんとかしたいという悩みが一番多いんでしょうけど…。お母さんが大変だと思いながら作る料理は、子どもにも伝わるような気がします。作った人の気持ちや思いが体に入るから、苦しみながら作ると苦しい気持ちが食べる人の体に入ってしまうと思います。私も泣きながら作った料理を知人に出したら、『今日は違う人が作ったような味がする』と言われたことがあるんです。辛い気持ちのときはキッチンに立てへんなと思いました」。
 作る人の思いと食べる人の気持ちはつながる。言葉を生業にしてきた私も、言葉も気持ちはつながっていると思う。プラスの言葉を発すると気持ちがよくなるし、マイナスの言葉を口に出すと悪しき気持ちになる。そのことを指摘すると、青山さんも同調してくれた。
 「私も姉から教えられました。何があってもマイナスの言葉は口に出したらあかん。すごく大変なことが起きたら、逆にラッキーやと言いなさいって。そうしたら大事な気づきを必ずもらえるはずや」と。
 青山さんの姉は、自分が死ぬことで、何かを残そうとしてくれたのかもしれない。
 「姉は優秀だったからいつも家庭の中心にいて、昔は私なんか生まれてこなくてもよかったんじゃないか≠チて思ったこともありました。姉は私にとてもやさしく、一番生きていてほしい人が死んでしまって、なんで私が生きているんだろうと考えたとき、私はただ生きているんじゃなくて生かしてもらっていると気づいたんです。そうしたら一日一日、一瞬でも無駄にしてはいけないと思うようになりました」。
 青山さんの心残りは、姉が最後に食べたものが、病院から出されたゼリーだったことだ。体調も回復していたので、まさか亡くなるとは思わず、自分で作った野菜スープを飲ませてやれたらよかったと今でも後悔している。「その悔いがあるから、これが最後の食事になってもいいと思えるものを作っています」。

 青山有紀さんの「紀」は紀元の「紀」だが、いまのような考え方をする前の「紀元前」と、いまの「紀元後」とでは、自分自身が大きく変わったようだ。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

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1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

イネ・セイミ

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