海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 ピアニストの西村由紀江さんとは、20年近くまえからの知り合いだ。何度か仕事も一緒にしたが、あまり本音を見せない人だった。
 だが、久しぶりに会った由紀江さんは、憑き物が取れたように明るくなっていた。輝く瞳、輝く笑顔は、「私はなんて幸せなの」と語っている。殻や枠が取れて、楽に呼吸しているように見えた。「いい意味で欲がなくなったんです」と自分でも言っていた。
 本音でズバズバ話してくる。身にまとう衣装がすっかり変わったようだ。いや、着飾った衣装ではなく、素の自分、ありのままの自分でいいんだと思っていることが、伝わってくる。

 いままでのことが一つも無駄になっていない。思い返したくないことも含め、すべてのことが、いまの由紀江さんに繋がっている。何か直接的なことではなく、いくつもの経験が、由紀江さんを「ふっきらせた」のだと思う。

心を代弁してくれたピアノ
 大阪・豊中市の生まれ。父は製薬会社のサラリーマンで、母は、ピアノ講師をしていた。
 生まれてすぐ、子守唄代わりに、バッハやヘンデルを聞いていたそうだ。3歳からピアノを始め、早くから才能を発揮した。天才少女と呼ばれ、幼い頃から海外へ遠征する体験も積んだ。
 だが、父は「女のくせに」「子どものくせに」が口癖で、自分の思う型からはみ出ると、すぐ怒り出した。父の機嫌を損ねないようにと、緊張感が漂い、家の中に安らぎはなかった。いつしか、笑わなくなった。引っ込み思案で、話すのが苦手な子どもだった。学校にも溶け込めず、遠足や運動会はキライだった。集合写真の顔もうつむいてばかりだった。
 幼い頃から両親の諍いも絶えず、それをかき消すように鍵盤を叩いていた。唯一、自己表現出来るのは、ピアノを弾くときだけだったのだ。西村さんにとって、ピアノを弾き、曲を作ることは、日記を書くようなものだ。日常の中で何か感じた時にメロディが生まれる。早くから作曲の才能を発揮していたが、作る曲は、「ひとりぼっち」とか「お留守番」とか寂しいタイトルと曲調がほとんどだった。落ち込んでいるときのほうが、曲がたくさん出来た。

 やがてデビューが決まり、いつのまにか、ピアノは「逃げ場」ではなくなった。桐朋学園大学ピアノ科入学と同時に19歳でデビュー。91年、ドラマ『101回目のプロポーズ』の作曲を手がけたことから、世間の注目を集めはじめ、コンサートに加え、ドラマや映画等の音楽プロデュースなど、多忙な毎日を送るようになっていった。

 ただ、ピアニストになってからも、殻から抜け出せないでいた。所属していた事務所の決められた枠にはめられていた。あげく、その事務所から契約解除という手痛い通告を受け、人が信じられないようになり、長いトンネルに入ったこともあった。離れていった人もいたが、心が萎えた西村さんを支えてくれた人もいた。トンネルにいるとき、自分だけでは生きることが出来ない、人の縁があってこその自分だと再認識出来た。萎れた花に自分で水をやりながら、西村さんは、ひと皮むけた。
 ライフワークとして、学校や病院でのコンサートを全国各地で精力的に行っている。
 例えば学校だと、体育館のフロアにピアノを下ろし、子ども達にピアノを半円で囲むように座ってもらう。ピアノで「肉じゃが」や「うどん」などを表現するメロディーを弾き、給食のおかず当てクイズをしてみるなど、音楽に親しんでもらういろいろな試みをしている。
 名曲を聞かせたり、テクニックを見せたりするのではなく、1音1音がいとおしかったり、音が出るということ自体が楽しかったり、哀しく聞こえたり嬉しく聞こえたりしてくる…そういうことを感じてほしいと取り組んでいる。
 そういう試みを通して、西村さんは得たことがある。ドと1音弾いただけで、聴いた人が泣ける音楽。そこに思いが凝縮され、温かさや心地よさとなって伝わる音楽。子どもたちに接しながら気づかせてもらった。

家族の再生
 母が病気で倒れ、離婚していた父が看病したことをきっかけに、両親も再婚した。
 最近、両親の出身地である種子島に、よく足を運ぶ。種子島中・高校の校歌も作曲した。
 祖父は、初代の西表市市長だ。先祖のお墓参りをする。
 コンサートを開くと、会場に父の姿を見かけることがある。あれだけ厳しく接してきた父も、自分の音楽を認めてくれたようだ。
 弟がマネージャーになった。自分のいちばんの理解者である家族の結びつきが強くなり、西村さんの憂いも晴れた。彼女が大きく変化した理由はそこにあるようだ。これから生みだされる音楽にも変化がありそうだ。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)
「言えなかったありがとう」
好評発売中

■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月2回 第2、4金曜日 午後1時〜3時
 会 費:1回 2,250円(3ヶ月分前納制)
 問合せ:0569−35−0470

イネ・セイミ

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