海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 「ぶれない」「びびらない」「怒らない」「侮らない」「先送りしない」…そんな『人に強くなる極意』を持って生き抜いてきた人がいる。何しろ拘置所に512日いたが、強靭な精神力で乗り切った人だ。
 作家の佐藤優さん。外国の要人、日本の政治家、特捜や検察などに対して、ギリギリの交渉力を発揮してきた。いまは超人的能力で連載60本をこなしている。

 強面の人かと思っていたが、実際に会ってみて、佐藤さんへの印象がずいぶん変わった。常に筋が通り、真摯な生き方をしている。ただその主張は声高でない。居丈高でない。押し付けがましくない。強いということは、優しいということではないか。「気は優しくて力持ち」とは、よく言ったものだ。ほんとうに強い人は、力を誇示しないものだ。強いから優しくなれる。優しいから強くなれる。そういえば、佐藤さんの名も「優」。

 1960年生まれ。同志社大学神学部で学んだあと、ノンキャリアの専門職員として外務省に入省。ロシアでの情報活動で活躍し、「外務省のラスプーチン」という異名をとったこともある。
 2002年、背任容疑で逮捕、起訴された。2005年、執行猶予付き有罪判決を受けた一審判決を機に、捜査の内幕や背景などをつづった『国家の罠』を出版し、大きな反響を呼んだ。その後、興味深い著作や本音の評論で多忙な日々を送っている。

 佐藤さんの近著『人に強くなる極意』(青春出版社)がベストセラーになっている。
 高校生時代から愛用している『試験に出る英単語』と同じ青春新書シリーズに、自分の本が加わるのが、心の底から嬉しいとお茶目なところもある。

 「この本を書いた思いは、グローバリゼーションの本格化と国家機能の強化という時代状況の中、人間力を強化する必要があるという思いからだ」
 「真理は具体的であるべきと考えているから、実行不可能なことは書いていない」

怒らない
 怒りの感情を、どうコントロールするかが、よりよい人生を送るポイントだという。
 512日、拘置所で暮らしたときも、怒りの感情はなかったそうだ。「自分をごまかしたくない良心のおかげで、怒りで自分を見失うまいという一心で」平静な感情が保てたそうだ。
 佐藤さんが言うには、まず、自分の中の「怒り」を紙に書き出すと良いのだそうだ。なんだかイライラするとか、怒りが湧いてきたという時に、この感情がなぜ出てきたのか、どこから出てきたのかを客観的に分析する。嫉妬からくるものなのか、コンプレックスからくるのか、焦りからなのか…。その出所がわかったら、嫉妬やコンプレックスや焦りの理由を分析していく。こうして論理的に感情の糸をほどいていくと、その作業自体で冷静になれる。糸をほどくには、小説や映画で、人生の代理体験するのもいい。気持ちを昇華し、カタルシス(浄化)を得ることで、心を柔らかくするには、芸能や芸術、文芸の役割も大きいという。なるほどと深く合点。

びびらない
 「びびらない」ためには、相手の内在的論理を知ることが重要という。
 それこそ、検察の取り調べは、びびらせるようなことばかりでは?と問うと、「旧ソ連崩壊という未曾有の体験も大きい。代理経験も含めてさまざまな経験をしておけば、何かびびるような場面に出くわした時でも、『この人は前に会ったあの人に言動が似ているな』とか、『いまの状況は本に書かれていた状況にそっくりだ』と冷静に分析できる。相手がよくわからないから恐怖心が生まれてびびってしまうのだ。経験値の中で、対象がカテゴリーに分けられていれば、恐怖心に陥ることはない」と言い切る。
 ただし、自分の限界も知っておいて、びびって逃げることも、時には肝要。「自分ほど、国家の恐ろしさが身に沁みている人間はいないだろう。領収書はしっかり取っておくし、信号無視はしない。国家権力は、どんなことでもケチをつけてくるから」。

飾らない
 自分を飾らず等身大で仕事することが大事だとも、佐藤さんは説く。仕事でお互いが認め合う関係になれば、余計な約束事やルールをつくらなくても上手く仕事が形になる。例えば、信頼している編集者や担当者との関係。「彼らとの仕事には心地よいリズム感が生まれるが、それは必要最小限のやりとりで仕事ができるから。つまりすべてがシンプル。とにかく仕事をする相手に真摯に向き合って、嘘や偽りを排除していけばいい」。
 「飾らない力を得るには、自分が何者であるかを明確にする。人間としての根っこや軸がしっかりしていれば、虚実の間で揺れ動いても、飾らない関係が作れる。いざというとき素のままで相手に向き合える」。

断らない
 仕事は、原則、断らないようにしている。自分に負荷をかける意味でも「断らない」のだそうだ。「常に、実力の上を意識する。思いがけない成果が得られるから。連載60本、毎月300 冊の読書…。すごいとしか言葉が見つからない。
 思想信条も左右問わず受け入れる。「節操ないくらい間口が広い」。「キリストほど相手を受け入れた人はいない」とクリスチャンの佐藤さんは言う。
 勾留中に、読書や文章を書いたことが、第二の人生を育んでくれた。「勾留にも感謝している」。なんという人だ!これだけ強靭な精神力を持っていても、近寄りがたい存在ではなく、人間的魅力に溢れた佐藤優さんに、親近感を覚えた。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)
「言えなかったありがとう」
好評発売中

■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月2回 第2、4金曜日 午後1時〜3時
 会 費:1回 2,250円(3ヶ月分前納制)
 問合せ:0569−35−0470

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