海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

父の心臓病が原点
 天皇陛下の心臓手術の執刀医として、世間の注目を集めた天野篤さんは、型にはまらない医師人生を歩んできた。すべては「患者さんを助けたい」という一心で、寝る間も惜しみ努力をしてきた結果が今の天野さんを築き上げた。その生き方は一途そのものだ。
 昭和30年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部心臓血管外科教授。日本大学医学部卒業後、4つの病院を経て、順天堂に来たのは10年前だ。心臓を動かした状態で行なうオフポンプ手術の第一人者である。これまでの手術数は6 、500例を超え、成功率は98%を超える。

 天野さんは高校時代からマージャンやパチンコの腕がプロ級だった。一生食べていけると思えるくらい極めた。高校に入学した頃までは勉強をしなくても成績がよかったので、この分なら東大も合格圏だと遊んでばかりいたら、三浪してしまった。
 何とか日大に入れたが、大学の医局には残らず、通常のコースとは異なる道を選んだ。一般病院を渡り歩いて手術の腕を磨いた。傍からはワンダリング・ドクター(さまよえる医師)といわれたが、手術してよくなった患者の口コミでどんどん手術数が増えていった。
 手術のたびに「この患者さんの命を全力で救う」という気持ちがものすごく強い。 父を心臓病で亡くしていることが大きく影響している。

 医者の道を歩み始めたのも、父の病気がきっかけだ。父は心臓弁膜症で、66歳のとき、三度目の手術のあと亡くなった。現在の医療技術をもってすれば助けられたはずだ、父を救えなかった後悔は今も強く残っている。「父の二回目以降の手術は、明らかに私の判断ミス。手術するタイミングを含め、私の決めたことすべてが悪い結果を招いてしまった。『もう失敗はするなよ』という父の思いを背負いながらやっている」。
 

 東日本大震災が発生した最中にやっていた手術が、父と同じ心臓弁膜症の再手術で、そのときも父への思いが重なり、「何があってもこの患者さんは助ける」と誓っている自分がいた。 余震が続く中、無事手術を終えた。

天皇陛下の人柄にふれて
 天皇陛下の心臓手術の時、東大の医療チームの中に、天野さんが一人加わった。術後の記者会見では普段通りに手術できたと言っていた。「天皇皇 后両陛下が、いつも通りにやってくれたらいいという雰囲気作りをしてくださったので、普通の医者と患者という関係でいられたような気がします。私はいつも患者さんをリラックスさせるために、いろいろな話題でコミュニケーションをとるんですが、陛下は逆に私のことを気遣ってくださって『順天堂大学は駅伝が強いですね』というように、自然な形でお話できたことが大きかったと思います。皇后さまの発するやさしさオーラも力になりました」
 「両陛下のお人柄にふれて、感じ入るものがありました。両陛下はこの日本の中で、最も重い責務を背負われているにもかかわらず、すべてを受け入れて感謝するという姿勢は、国民のために生きるというお気持ちがお強いからでしょう。そういうお二人にお会いできて、私にとっても大きな学びになりました」
 「手術をしたらお元気になると確信していましたが、強行日程の中でインドを訪問されたことは私の大きな喜びでした。高齢の患者さんたちにも、勇気をもたらす力強いメッセージになったと思います」
 「陛下が心臓手術をしたことはみなさん知っていますが、それを忘れさせるほどお元気なことが手術成功の証しで、自分の勲章のように思っています」
 天皇陛下の手術後、天野さん自身にも変化があった。「どんな患者さんにも、これがベストだという形を納得するまで見つけ、ギリギリまで自分の全力を尽くそうという思いを新たにしました」。

世界一の用心棒
 「私は今、世界で一番の心臓外科医だと自負しています。社会的地位など関係なく、飛び込みの患者さんにも最高の手術ができるということです」。
 それだけ自分の腕に自信があるということだ。世間では「神の手」と言われているが、天野さんは「自分の手はものさし」と言う。手術中は、自分の経験の中で培ってきたものを患部に寸分違わずピタッと合わせる「ものさしの手」になっているということだ。
 自分を一言で表すとしたら?と聞いた。「一匹狼の用心棒」と答えが返ってきた。さしずめ敵を殺す用心棒ではなく、助けるほうの用心棒だ。順天堂という「藩」に属しているけど、一匹狼の用心棒感覚で仕事をしている。「仕官していない剣の達人が、仕事を頼まれればバッタバッタと相手をなぎ倒し、仕事が終われば、やさぐれて酒でも飲んでいる。そんなイメージです(笑)」。

 対談後、魂の抜け殻状態、放心状態だった。魂が行き交う出会いだった。「一途、一心」に生きている天野さんは、ぶれずに、何の構えも見せない人だった。自信を持った人だが、それは過剰ではなく、適度でもなく、天野さんにしか計りえない自信の尺度だ。自らの腕を「世界一」と言い切っても、決して傲慢に聞こえないのが不思議な人だ。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)
「言えなかったありがとう」
好評発売中

■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月2回 第2、4金曜日 午後1時〜3時
 会 費:1回 2,250円(3ヶ月分前納制)
 問合せ:0569−35−0470

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