海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 話は弾みに弾んだ。時に脱線しつつも含蓄のある話が出来た。ボクは、対談場所に将棋盤を持ち込んだ。もちろん、森田正光さんが大の将棋ファンだと心得てのことだ。この将棋盤が初対面という壁を一気に取り払ってくれた。将棋談義に、読書談義に、天気談義に、意見の一致を見ることが多かった。

将棋談義
 気象予報士があまたいる中で、森田正光さんのことは、日本中の誰もが知っているといっても過言ではない。
 1950(昭和25)年、愛知県名古屋市生まれ。森田さんが、幼いころ、家に大人が集まる日があって、お酒を飲みながら将棋をやっていた。それを傍らで見ていて自然に覚え、そのうち小学生ながら一番強くなっていた。
 気象協会に入って、東京に転勤になった。夜勤の時、絶対勝てると思った先輩からコテンパンにやられた。10年くらい将棋を指していなかったとはいえ、悔しくて、将棋雑誌を読み返し定跡をおさらいし、将棋道場にも行って腕を磨いた。アマチュア三段の実力がある。森田さんの人生に、将棋は大きな影響を与えた。
 「芹沢博文さんがいなかったら、私の天気解説は成立しないですね。20代後半からNHKの将棋対局を毎週欠かさず見て、当時出始めのビデオに録るぐらいのめり込んでいたんですけど、芹沢さんの解説が一番好きでした。例えば内藤國雄さんと米長邦雄さんが対局すると、『これが本当の国を挙げての戦いだ』ってダジャレを言ったり、面白いことや裏話をいっぱい言うんですよ。でも聞き手の神田山陽さんが何か質問すると、バーッとものすごい手筋が出て来る。『カッコいいなあ。プロとはこういうものだ』と思いました。普段はおちゃらけていても、ちょっと核心に触れれば自分のバックボーンを全部出してくる。天気解説もそうでありたいと思って真似していたら、なんとなく注目されるようになったんです」


読書談義
 一見軽く見られる人こそ、アヒルの水かきをしている。深い教養、豊富なことばの引き出しがあるからこそ、ジョークも言える。他の人にはできない解説をするためには、猛烈に勉強して、知識をどんどん増やす努力をしていたのだ。テレビで得た知識と読書で得た知識は明らかに違う。深く知るにはやっぱり読書でないとならない。
 気象に関する本はもとより、雑学系も含め、たくさん本を読んだ。倉嶋厚さんという気象学の権威が、「天に三つの廊下あり。照ろうか…降ろうか…曇ろうか…」と著書に書いているのを読んだ森田さんは、これは使えると思い、ニュース番組で披露したら受けた。倉嶋さんは文章が美しくて“光の春”は、倉嶋さんがロシア語から訳して広めた。今普通に使われている“熱帯夜”も倉嶋さんが言いだした。森田さんの気象解説には芹沢さんと倉嶋さんが多大な影響を与えている。
 読書は、自分の知らない世界を教えてくれる。森田さんは『役に立たない』と思う本こそ読むべきという。門外漢で、今まで触れたことのない世界でも、読んでみると面白いことが往々にしてある。
 森田さんはあまり常識にこだわらないというか、本を読む時、まず、これは事実ではないかもしれないと疑問を持つようにしているとか。信じたいために疑い続けるというか、まず疑問を持つのが基本になっている。何事も鵜呑みにはしない。森田さんの人と違うことをやろうという姿勢は、気象の世界でも人生でも一貫している。

天気談義
 ムラカミの富山での新人時代、あるお寺のご住職から、「NHKのアナウンサーはよく天気の話をするけど、いい天気、悪い天気と言うだろう。誰にとってよくて、誰にとって悪いんだ?」と言われたことがある。意味がわからずきょとんとしていたら「富山は米どころだ。お百姓さんが苗を植えて、雨が降らないかなと空を見上げている時に、アナウンサーがそれこそノー天気に『いい天気でよかったですね』と言ったらどう思われる?自分にとっていいか悪いかでものを言っちゃいけないよ」って言われた体験談を森田さんに話した。
 森田さんも、若いころ、同じことを上司から口を酸っぱくして言われたそうだ。いい天気と言ったらすごく怒られて、それがトラウマになってずっときつく守っているとか。天気予報に限らず、自分の価値判断でいい悪いと決めつけて、○や×のレッテルを貼らないほうがいいということだ。いい悪いがいけないのではなく、よく考えてものを言うようにしようということだ。
 居酒屋の人に「天気予報で、夕方から雨が降るって言うのはしょうがないけど、『早くお帰りください』って言うのだけはやめて」と言われたことがあるそうだ。ものの言い方は、なかなかに難しい。

 最近の異常気象は、やっぱり地球に対する人間の成せる業が引き起こしたのかと問うた。森田さんは、きっぱり「そうだと思う」と言いきってくれた。以下は、森田さんの話をまとめたもの。
 自然というのはバランスを取るための運動で、例えば、地上の気温が30度だとすると5、000m上空は0度。差が30度というのが標準的な空気で、これなら対流が起こらず安定している。ところが、上空の気温は変わらないのに地上が35度になると、上空との気温差を平衡化するために大雨が降る。バランスが崩れてきているわけだ。
 台風も同じで、熱い空気を北極の冷たいところに持っていくのが役割だ。だから、すべての台風は北極を目指して進む。こうやって地球はバランスを取ろうとしている。ところが地球温暖化で海水温が高くなると、余った熱をできるだけ北へ持っていくために台風が強くなり、その温度の勾配を一瞬にして片づけようとすると、激しい気象状態が起こる。30年に1回だった異常気象が、今は10年に1回ぐらいの頻度で起こっている。
 人間の世界でも、一部に権力や富が集中すると革命が起こって平衡化する。歴史はその繰り返しだという。さすが、見識の深い森田さんならではの分析だ。

■村上信夫プロフィール
2001年から11年に渡り、『ラジオビタミン』や『鎌田實いのちの対話』など、NHKラジオの「声」として活躍。
現在は、全国を回り「嬉しい言葉の種まき」をしながら、文化放送『日曜はがんばらない』(毎週日曜10:00〜)、月刊『清流』連載対談〜ときめきトークなどで、新たな境地を開いている。大阪で『ことば磨き塾』主宰。
1953年、京都生まれ。
元NHKエグゼクティブアナウンサー。
これまで、『おはよう日本』『ニュース7 』『育児カレンダー』などを担当。著書に『嬉しいことばの種まき』『ことばのビタミン』(近代文藝社)『ラジオが好き!』(海竜社)など。趣味、将棋(二段)。

http://murakaminobuo.com


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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

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 と き:月2回 第2、4金曜日 午後1時〜3時
 会 費:1回 2,250円(3ヶ月分前納制)
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