海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 自我の電源を消すボクが壇蜜さんに会いたいと思ったきっかけは、ヌード写真ではない。ある新聞記事の写真を見たからだ。それは、食堂で目を閉じて「いただきます」と手を合わせている姿だった。神々しいなあと思った。
 そのことを最初に告げると、「いただきますは、命をいただくことだと、秋田の祖母が教えてくれましたので」と、壇蜜さんは、少し恥ずかしそうに答えた。
 いま84歳の祖母から有形無形に教わったことは多い。小さい頃はいつもいっしょにいたので、考え方や感覚は、かなり影響を受けた。

警戒心を与えない声
 壇蜜さんの声は安心して聞いていられる。壇蜜さんの声には人を惹きつける周波数があると思う。「他人に警戒心を与えないという意味では自分でも好きです。武装していないねといわれたこともあります」
 実は、ボクも「村上さんの声は”金の声“ですね」と褒められたことがあるが、「声は先祖からの贈り物だから感謝しないといけませんね」と同調を求めると、「亡くなってしまえば、その人の声はもう聞けませんから、印象づけられる声をもっていることは、遺伝子の贈り物だとありがたく思っています」と呼応してくれた。
 1980 年、秋田県の生まれ。日本舞踊師範、英語教員免許、調理師免許、遺体修復師と、様々な資格をもつ。大学卒業後、和菓子工場で働いたり、大学病院の研究所補助などを経験したりして、2010年にグラビアデビューした。壇蜜の芸名は、仏教用語の「供え物を捧げる場所=壇」と「供え物=蜜」から名づけた。
 芸能界に入ることに、両親は反対しなかった。流れに乗りながら経験を積み重ねていくというところは父に似ているらしい。選んだ状況を疑わないというところは母に似ているらしい。さすがの分析力。何事も俯瞰しながら、もう一人の自分が冷静に分析している。ただ父は、ひとこと「薄着の仕事だから風邪を引かないようにして頑張れ」と言った。

「壇蜜」を消す
 壇蜜さんは仕事をするとき、自我の電源を消しているという。
 人はともすれば「私が、私が」といいたい存在で、62歳の僕などは、まだまだ自我を消せないでいる。
 よくもまあそんなことが出来るものと問うと、「テレビの映り方や写真の撮られ方とかが重視される芸能界で、我を消してやっていくことがいかに矛盾している行為かというのを体現できたらいいなと思っているんです」と、やや哲学的な答えが返ってきた。
 怪訝そうな顔をしていると、「平たくいうと、ブログに”おいしそうなもの“を載せないこと。私の生活がこんなに充実しています、私みたいにしていると幸せになれますよということの体現がタレントの根っこだと思うんですが、それを除いたところで私は生きていけるかという実験をして、いま五年目です」と咀嚼してくれた。
 勝手に感情の体温を上昇させて、いい気になりたくないということなのだろう。壇蜜さんを見習わねばとも思うが、ボクは、自我の豆電球くらいは点けておきたい。

読書が教えてくれること
 壇蜜さんは、読書家だ。本が育んでくれたことは多い。
 中でも、宮本輝作品は、ほぼ全部読んでいる。特に『五千回の生死』という小説に共感した。「大変な現実の中で、『いま死のうと思ったけど、いま生きようと思った』というのを繰り返しながら、みんな仕方なしに生きているということがすごく伝わってくる。『がんばって生きよう』という姿勢を前面に出しがちな世の中ですが、絶対、仕方なく生きている人のほうが多い。仕方なく生きているんだとわかれば、生きていることが辛くなくなるのかもしれない」
 壇蜜さんは言う。「輝かしく生きましょう!みたいな広告に振りまわされないほうがいい。輝かなくてはと思わなくていい。宣伝文句みたいに、明日から急にはよくならないですよ。明日が変わらないことが辛い人もいますけど、それが現実ですし、現実を生きていくしかありませんから」。
 「読書はそういうごまかしを見抜く目を育ててくれるのかもしれませんね」と納得顔でボクが言うと、「それと読書は立ち止まっている時間だと思います。現実から少し離れて、違う世界を自分の時間軸で、自分のペースで見ることが大事なのではないでしょうか」と、また冷静な分析が返ってきた。

 身体だけでなく心もヌードになれる人だと感じた。「素」でいられる人だと思った。だから、ボクも構えることなく「素」でいられた。
 「僕」と「俺」を上手に使い分けられる男性が好みだそうだ。人に紹介するときは「僕のいい人」。二人だけの時は、「俺、好きだよ」。僕で放して俺で縮める感覚は男女間の理想の距離感だという。壇蜜さんの前で、「素」で「俺」って言ってみたかった。

■村上信夫プロフィール
2001年から11年に渡り、『ラジオビタミン』や『鎌田實いのちの対話』など、NHKラジオの「声」として活躍。
現在は、全国を回り「嬉しい言葉の種まき」をしながら、文化放送『日曜はがんばらない』(毎週日曜10:00〜)、月刊『清流』連載対談〜ときめきトークなどで、新たな境地を開いている。大阪で『ことば磨き塾』主宰。
1953年、京都生まれ。
元NHKエグゼクティブアナウンサー。
これまで、『おはよう日本』『ニュース7 』『育児カレンダー』などを担当。著書に『嬉しいことばの種まき』『ことばのビタミン』(近代文藝社)『ラジオが好き!』(海竜社)など。趣味、将棋(二段)。

http://murakaminobuo.com


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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

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 ところ:常滑屋
 と き:月2回 第2、4金曜日 午後1時〜3時
 会 費:1回 2,250円(3ヶ月分前納制)
 問合せ:0569−35−0470

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