海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

信子と信夫
 信子と書いてシンコと読む。だが、大概とノブコと言われるそうだ。だからノブオくんは、ずっと親しみを抱いていた。
 料理研究家、清水信子さん。女子栄養短期大学卒業後、東京ガスや産経学園などの料理講師を務め、NHK ほかの料理番組や雑誌、料理講習会で活躍。懐石料理から惣菜まで、旬の素材を生かした簡単でおいしい和食の基本をわかりやすく指導することで定評がある。

 小学校六年生くらいから台所に立っていた。母が病弱で入退院を繰り返していたので、兄と幼い妹たちに食事を作らねばならなかった。だが、全く苦にならず、その頃から料理の勉強をしたいと思っていた。母が快復してからは、父のつてで、とある高名な料理家のお弟子さんについて習ったこともある。ゆくゆくは、自宅に近所の人や友人を呼んで母といっしょに料理教室でもできたらいいと考えていた。
 料理の作り方だけを伝えるのは「料理伝承家」。料理研究家と名乗るからには、つねに料理を研究し続けなければならない。例えばおいしいご飯の炊き方を何度も温度計で調べて研究した。よく「赤子泣いても蓋取るな」というが、吹きこぼれたらあとが大変だ。文献を調べるとずっと蓋を取るなということではなく「火が引いたあとは蓋を取るな」という意味だった。お鍋で炊くときは中の温度が九八度までしか達しないので、熱がまんべんなく行き渡るように、途中で蓋を取って混ぜるやり方を発見した。昔かたぎの板前さんたちからは批判されたが、混ぜると全体が一〇〇度になっておいしく炊ける。料理の話になると、がぜん熱を帯びて止まらない。

ラジオと新聞
 僕が清水さんに最初にお会いしたのは、ラジオ番組だった。昔からラジオが好き。家のいたるところに置いて、お風呂でも聞いているそうだ。ボクの番組の熱心なリスナーでもあった。「村上さんはさわやかで朝の番組にふさわしく、お人柄が出ていましたね。でもときどき、村上さんご自身は笑っていても、本当はちょっと腹を立てているみたいと感じることもありましたよ」ラジオリスナーは耳が鋭い。
 清水さんは、料理番組に出演するようになってから、正確な日本語を学ぶためにアナウンス学校に通ったことがある。兄から「フランスの料理家はテレビに出るようになると、話し方の学校に通って言葉の勉強もしている」と聞いて、私もきちんとした日本語で料理を伝えたいと思った。アナウンス学校では先生に放送局のアナウンサーにならないかと誘われたこともあるそうだ。
 新聞もなめるように読む。世の中の情報にアンテナを張って脳を活性化させていることも若さを保つ秘訣なのだろう。
 料理の記事は切り抜いて、料理事典の関連するページに挟んでいる。昔の黄ばんだ新聞記事がたくさん挟んである。その事典は、料理研究家になったとき、母がお祝いにと買ってくれたものだ。昔はパソコンですぐ調べられる時代ではなかったので、料理編集者から「あの料理事典で調べていただけますか」と電話がかかることもあった。自分なりに内容を補足してきたこの事典は、一生の宝物だ。僕の母も同じようなことをやっていた。まだテレビの録画などできない時代だったので、料理番組を見てはノートに書き込み、料理の新聞記事も切り抜いていた。それを毎日、家族のために作ってくれていた。僕にとっては、そのすべてがおふくろの味。清水さんがNHKの「きょうの料理」で作ってきた料理も、僕にとってはおふくろの味なのだ。

ひとり力
 25年前、清水さんがNHK「きょうの料理」で初めておせち料理を担当することになったとき、重い病の床にあった夫は、病床ですごく喜んでくれた。当時、「きょうの料理」でおせちを担当するのは、料理研究家にとってステイタスだったからだ。
 でも結局、夫は放送を見られなかった。入院先の三重県四日市から、遺骨を抱いて東京に戻る途中、電車の車内で「きょうの料理」のテキストの吊り広告が目に入って、「ああ、一緒に放送を見ることができなかった」と涙があふれた。
 夫が亡くなってしばらくは、夫ロス≠フ状態が続いた。五年くらいは立ち直れずにいた。街で家族連れを見るのも嫌だった。だが、仕事に救われた。一日中動き回り、疲れて寝てしまう日々を送っているうちに気持ちも回復してきた。
 少しずつ「ひとり力」をつけていった。一人だとどうしても話すことや笑うことが少なくなって、表情がなくなってしまうから、声に出して文章を読んだり、一人百面相をしたりしている。朝はとくに声が出にくくなっているので、顔をこすりながら発声練習をする。商店街を通るときは、店の人がこちらを見ていなくても元気な声で挨拶をする。清水さんの話し方や声はいつも明るくて、気持ちが温かくなる。
 とにかく丁寧な人だ。清水さんはこまめに電話をかける。直接話したほうが、意思が伝わりやすいからだ。今回も、対談日の前日「よろしくお願いします」、翌日「ありがとうございました」と電話があった。真心込めて、丁寧に生きるのが、この人の信条だ。

■村上信夫プロフィール
2001年から11年に渡り、『ラジオビタミン』や『鎌田實いのちの対話』など、NHKラジオの「声」として活躍。
現在は、全国を回り「嬉しい言葉の種まき」をしながら、文化放送『日曜はがんばらない』(毎週日曜10:00〜)、月刊『清流』連載対談〜ときめきトークなどで、新たな境地を開いている。大阪で『ことば磨き塾』主宰。
1953年、京都生まれ。
元NHKエグゼクティブアナウンサー。
これまで、『おはよう日本』『ニュース7 』『育児カレンダー』などを担当。著書に『嬉しいことばの種まき』『ことばのビタミン』(近代文藝社)『ラジオが好き!』(海竜社)など。趣味、将棋(二段)。

http://murakaminobuo.com


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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

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 ところ:常滑屋
 と き:月2回 第2、4金曜日 午後1時〜3時
 会 費:1回 2,250円(3ヶ月分前納制)
 問合せ:0569−35−0470

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