海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
陶芸家 中塚奈美さん 前田亜希子さん ちょっとおじゃまします
 彼女の工房を訪ねたのは、うだるような暑さが続く7月中旬。その人は、椅子にぐったりともたれていたが、私を見るなり「後藤です」と、挨拶をしてきた。長身で気品のある女性。モデルのようなスタイルのよさに、「えー!」と驚きを感じた。スーパーモデルといえば、私の心を刺激する存在といえるが、彼女はモデルには全く興味がないといった。
 彼女の色あせることのない夢とは「陶芸を一生していくこと」と、いう。OL時代も心の片隅に陶芸への熱い思いがあったという。今は、陶芸への道を迷わず歩んでいる。「そんなに楽しいの?」と聞けば、「おばあちゃんになってもやりたいの」と、くすくすと笑い、宝物を見つけたかのように、キラキラと瞳を輝かせた。
 陶芸を本格的に始めて4年目。現在は、共同工房の一室を借りて作陶する。彼女は粉引きを最も得意とし、追究し続けている。「粉引きは何気ないんだけど、魅力的」という。どちらかというと、シンプルで飾りっ気の少ない粉引きは、ありのままの自分を表現したいという彼女の意志を強く反映しているかのように見える。工房内は、粉引きの日用雑器が所狭しと並べられていた。「こんなに作って何をするの?と、みんなに聞かれるんです」という。確かに作品が多かった。その中に、個性を主張したという作品を見せてもらった。マット調の釉薬の日用雑器類。個性が足りないと辛口のアドバイスを受けて挑戦したのだという。手びねりの作品もあり、手の温かさが伝わってくる。
 「陶芸をやっていると、わくわくする出逢いがある」「知ってた?土を触った瞬間、心が踊り、手の動きで形ができる楽しさがある」と、いう。
 「日常使えて、ホッとできるもの、持っていてやさしい気持ちになるものを今後も作り続けていきたい」という。作品を見て、わくわくすれば、何よりもうれしいのだとほほ笑む。
 彼女を見つめていると、本当に夢中なのねと、私はそう思うしかなかった。そして、その素直な姿勢に、きっと、確かな手ごたえを感じているのだろうと思った。
(赤井伸衣)