海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 仲間は彼のことを『ナイスガイ』と呼ぶ。その『ナイスガイ』は頬を赤く染める、とてもシャイな人だった。製陶所の次男として生まれ、家業を継いで十数年。三年前には工房豆青窯を立ち上げ経営する傍ら、自身も冨本タケルとして陶芸家の道を歩んでいる。
 自分の作風を一つに決めたくないからと、土であったり、釉薬であったり、窯であったりと、新しいものに挑戦し続けている。日本の焼き物が飛躍的に進化した安土桃山時代の茶陶や花器に魅力を感じると、彼はいう。窯から出す時の喜びにわくわくする楽しさを味わい、自分の中の理想に近づけない悔しさにさらなる可能性を秘める。彼の一途な制作意欲を見守り続けてきた人は、彼のことを自分の世界をきちんともっていると、紹介した。彼が陶芸に飽きることはないようだ。
 私が訪ねた頃、作陶展の真っ只中だった。中でも、紅い志野の抹茶茶碗に彼の陶芸への情熱を感じさせられた。「紅い志野は、空気や温度などの条件ですごく変化する。今、紅い志野の釉薬を独自にブレンドして開発中。純常滑の原料で紅い志野を究めていきたい」と、説明をしてくれた。そんな言葉に、彼のひたむきなものを感じたと同時に、見て、使って楽しい芸術品という印象を受ける。
 こっそりと教えてくれたのだが、彼にはちょっとした構想があるようだ。大きな夢に向かう有志を募り、今までの得たものを大きな形として記念碑を造ることだ。彼らが発信するメッセージが、予想もつかない広がりとなることを願いつつ、私の想像力も膨らむ。
 最後に彼は言った。「やっぱり、子どもに尊敬される人生を歩みたいと思っている」。そこには、子どもに見せたい父親の姿をもっているのだろう。
(赤井伸衣)