海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 物を作ることが得意だった少年時代。卒業後は陸上自衛隊に勤めた。陶芸家になっているとは、誰もが想像していなかった。縁あって、窯屋の一人娘と結婚した。常滑に移り住んで38年。座右の銘は『感謝』。古い街並みと登り窯が醸し出す素朴な味わいが魅力の常滑に来て、出会った人は誇り高く、人情味豊かだった。仕事の幅を大きく広げることになったのも、このような友人や仕事仲間、家族に恵まれたからと話す。今は精神的な満足感に浸りつつ、伝統を進化させながら、未来の常滑焼を大胆につなげていく担い手となっている。
 38年前、家業は盆栽鉢を生産していたという。本業の盆栽鉢で生計を立て、お義父さんのロクロを引く姿を見よう見まねで覚え、時間がある限り、ロクロを引き、独学で陶芸を極めた。私が訪ねた時も「今日、盆栽鉢を買いました」と連絡が入り、根強いファンが日本各地にいる。「10年前に購入した湯呑みを今でも使っています」と、工房を訪ねながら報告してくれる人もいるという。大切に使ってくれる人がいるから、試行錯誤の苦労も達成感に変わるという。二三一さんの周りには、いつも温かいファンが存在する。
 二三一さんは、粉引を得意としている。粉引によって生まれる、鰄(かいらぎ)は何とも言えない魅力だという。細かなひび割れにも似た模様は、二三一さんの今までの地道な努力の表れとも思われる。この粉引によって、ファンに渡辺二三一という陶芸家を再認識させた作品といっても過言ではない。こそっと、無理を言って、新作を見せてもらった。突然、温かいお茶が恋しくなった時、この湯呑みでお茶を味わってみたい。その湯呑みにお茶が入ったとき、色合い、柔軟な曲線が朽ち果てることなく、いつまでも、心を和ませてくれるだろうと、思わずにはいられなかった。
 工房では、随時陶芸教室を開いている。また、二三一さんの作品を気兼ねせず、触ったり、目で確めたりと、成熟された作品を味わうこともできる。陶芸教室という開放的な空間で、二三一さんは話術も勉強中のようだ。「やっぱり、職人は話はダメだなぁ」と、二三一さんはそういって笑った。そして、私のために話術を磨いてくれたようで、おやじギャグ連発の面白い人であった。ファンも生徒もこのおやじギャグには大歓迎するのでは…と思いながら、取材を終えた。
(赤井伸衣)