海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 ひょんなことで栢野さんに連絡をした。携帯電話に出た彼の声は、なにやらとっても嬉しそうだった。岡山から常滑に来て10年。彼の10年間の集大成となる個展が、現在、ギャラリーセピカで開かれている。
 携帯電話で話して数日後、共通の知人を交え、知人が年内にはオープンさせるであろうと思われるサロンで待ち合わせをした。そのサロンはやきもの散歩道内にあり、常滑の町並みが一望できる高台にある。そこは、昭和の面影と懐かしさが共存する。
 久しぶりに会った栢野さんの、その人気の高さも人柄もさわやかさも、マイペースぶりも相変わらず健在であった。イベント時には、仲間や後輩向けに手書きの新聞を発行する面倒見の良さにも定評がある。栢野さんには、仕事を離れても豊かに語り合える同士のような人がたくさんいる。
 栢野さんの作品は磁器に鮮やかな色が使われているのが特徴だ。インパクトのある色使いも見逃せない。カラフルな色が、甘〜いお菓子のようにも見える。突然、どうしようもなく、フランボワーズ・チョコレート・キャラメル…のマカロンが恋しくなったとき、栢野さんの作品を眺めて、私は味わったつもりになっている。
 今回の作品展のテーマは「おいしい水」。初夏のギラギラと暑い時期だからこそ、清涼感に浸ってほしいという思いで手がけた作品がある。これらの作品の中で水差しは、色彩の美しさと遊び心がいっぱい詰まり印象的だ。
 栢野さんは今年の4月に『やきもの新感覚』と題し、INAXタイル博物館で作品展を開いた。この作品展に選ばれる作家は、いずれも孤高な挑戦者ばかりという。常滑からは4人目という快挙だ。責任の重圧に押しつぶされそうになりながらも成し遂げた達成感は、温かい思い出となったようだ。嬉しい収穫は、きっと栢野さんの今後に大きな糧となることだろう。
 作品の全てに作家の息吹が感じられる『栢野紀文展』は6日(日)まで、ギャラリーセピカで開かれている。是非、足を運んでほしい作品展だ。
(赤井伸衣)