海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 今、最も脂の乗っている時期で、仕事が楽しくて仕方がない様子の水上さんを訪ねた。
 「今年、一番嬉しかったことは?」と、反対に聞かれてしまった。私の返答は「・・・」。対話の時間は、水上さんからの質問から始まった。
 2005年、伝統を守りつつ、自由な表現を求めて窯を築いた。常滑では、珍しい半地下式の穴窯だ。その窯を水上さんは「一片窯」と命名した。「歴史のある常滑の穴窯で焼き方を復元してみたかった」という。その穴窯のある高台から眺める夕やけは、最高のロケーションという。900年前の先人たちも眺めていた光景に、人間の弱さを忘れさせてくれるという。昭和30年生まれの水上さんは、和洋折衷をセンスよく取り入れる世代だという。「今、僕がもっている感性で平安・鎌倉時代にタイムスリップしたら、どんな作品を作っているのかなぁ」と話す。この町の時間の流れが、どこか悠然としているようである。
 その窯で、水上さんは灰被窯変の作品を手掛ける。灰被窯変は施釉をしないので、窯焚が最も大切という。水上さんの窯変への憧れは強い。焼いている間に自然炎の力によって、衣をまといゆがみが生じ、人間の手ではできないものに出合う。それが、たまらなく楽しい。今、ようやく想うものに近づいてきた気がするという。
 水上さんの灰被窯変の作品は、渋モダンと称されている。抜群の存在感、そして、曲線の美しさ、きれいな仕上がりの花器は目を引く。また、干支を作る数少ない作家としても知られている。「焼締・象嵌・シンプル」。この3つのキーワードで作られる干支には、12支集めたくなるような楽しみがある。
 数々の入選歴や受賞歴をもつ水上さんだ。駆け出しの頃は陶芸家の登竜門や各種の賞を狙った。陶芸家デビューを華やかに飾っても、陶芸家として残る人はわずかと知る水上さんの言葉は、どれも説得力があった
(赤井伸衣)