海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 「岩橋3兄弟は有名だよ」と言われ、個展会場へ訪ねてみた。そこに現われたのは、人の良さそうなおじさんだった。ちょうど、10数年ぶりの個展の最中であった。「思うように売れないねぇ」と、ボヤいていたが、岩橋さんの作品には、全国に熱狂的なファンがいると聞く。
 岩橋さんは全国を旅して、全国出張個展を積極的に開く作家として知られている。旅は岩橋さんの仕事のエネルギーでもあるようだ。旅先での巡り合いが楽しくて、時間を見つけて、美術館に出掛ける。おいしいものに出あい、食べる。その土地でしか味わえない美意識・心意気が、日本中のどこにでもあるという。
 岩橋さんは結晶釉の窯変的なものを得意としている。窯を開けてみないと、出来栄えがわからないスリルを味わい、充実した気分で仕事をしているようだ。淡いピンクの結晶釉に桜を連想させる鉢、純白の結晶釉のお皿、エメラルドグリーンの結晶釉の大皿、コバルトブルーの結晶釉のオブジェ……は、どれも宝石箱に入れた宝石のように見えてしまう。岩橋さんは「この結晶釉は僕のすべて」と、答えてくれた。今まで誰も見たことのない側面と作品の息づかいを聴いてみたら、作品のもつ魅力がより伝わってくると思う。
 おしゃべりが苦手の岩橋さん。私とのおしゃべりに、岩橋さんの居場所を譲り渡そうと営業・接客担当の母親が気遣うのだが、どうも岩橋さんのテンポの悪さ、リズム感のなさに、母親からのダメ出しが出てしまう。お母様ももう少し辛抱してあげると、岩橋さんの心も少しばかり軽くなるのになぁ。でも、この親子には、このスタイルがベストなんだろうなぁ。「黙って、作品を見ていてくれればいい」と、岩橋さんの背中がそう言っているように思えた。
(赤井伸衣)