海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 60代半ばになり、やっと等身大の自分でいられるようになった。若い頃は、ただ作ればいいだけだった。お金欲しさに作品を作っていた。お金欲しさが作品に出てしまい、指摘され、ハッと気づいた。今では飽きることのない美しい作品作りを心掛けている。
 都築さんは急須や湯呑などの陶器に型を用いて草花などの文様を施す技法(印花)を得意としている。金やプラチナを用いて桜の印花紋を入れる。大人の雰囲気が出ていて、金やプラチナの繊細さが上品で美しい輝きを出している。
 出掛けた先の満開の桜に居心地の良さを感じた。精神的にも楽になっている自分に気づいた時に見かけた桜は美しかった。戦闘モードに入っていて尖った気持ちから、ふっと力が抜けて、和やかな気持ちになっていた時に見た鮮やかな紅葉には、胸がキュンとした。紅葉の花言葉「大切な思い出」とともに、和やかな幸せを運んできてくれそうな急須が出来上がった。都築さんの作品には、これら特別な思いが作品に印花紋として表現されている。
 都築さんの作りたい急須や湯呑は、誰かの日常にそっと寄り添いたい、その人の心を温めてあげたい、そんな思いが存分に表現されている。近年、二十歳くらいの若者たちが自分用に急須を購入すると聞いて、都築さんは目を細めた。世の中の流れは気にせず、自分のペースでじっくりと、急須を通して社会貢献ができればと思っている。
 常滑では13人目の日本工芸会正会員の都築さんだ。「職人の仕事は作品に勘がプラスされて、出来上がるもの。最後にその人の隠し味が出る。最後の一滴にこだわりたい」と、話してくれた。
(赤井伸衣)