海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 もともと物作りが好きだったので、土と自分1人で時間を共有できる陶芸に、あっという間に虜となってしまった。土を練って、ロクロを回して作陶する時間は村田さんにとって、自分が素のままでいられる時間だった。そして、1つ1つの作品に愛着をもっている。
 村田さんが弟子入りした先は、量産品の急須を作る窯元だった。親方の作る急須は誰にでもできる急須だった。自分を生かすには、自分だけのものを作る。親方と一緒の物を作っていては、親方を越すことはできないだろう。と、少々の不安をもつようになり、骨董店に通い続けていた頃、骨董店には村田さんの今後の活躍を応援するかのように、そのアドバイスがちりばめられていた。そこで、村田さんは以前からあったが、作り手がいなかった「絞り出し急須」に着目し、作陶することとなった。そうと決めたら、村田さんの制作意欲は高まる一方で、時には思いっきり失敗し、大胆になり、自分に刺激を与え続けた。そして、作品のスタイルは粋で洒脱なデザインの絞り出し急須が出来上がった。
 絞り出し急須に辛口のコメントをする私に、村田さんは自身の作品で自らお茶を入れてくれた。村田さんが最も大切にしていることは、お茶でゲストをもてなすことだ。それは、人と人との距離を縮めて、親しくなることを証明し、美味しいお茶は素敵な笑顔と共に会話を弾ませてくれるということだ。
 陶芸を始めて45年。今、本当にやりたいことに力を注げるようになったという。そして、「生涯現役 」と宣言してくれた。
 趣味は落語と浪曲。村田さんは、芸人の世界と職人の世界は似ているのかなぁという。
 15才で陶芸の世界に飛び込み、夢を実現しつつある今、改めて、若い頃の思いや夢は無駄にはできないと、村田さんの背中が無言で語っているかのようだった。  
(赤井伸衣)