海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 今も昔も変わらず、「朱泥の急須」は常滑焼の代名詞ともなっている。だが、水野さんは朱泥ではなく白泥にこだわる陶芸作家だ。
 白泥との出合いは、ただただ個人的に朱泥が好みではなかったからという単純な理由と、「藻がけ」の美しさの虜になったからだ。自分で考え抜いた「象嵌梨皮急須」は、当時としては斬新な急須であった。だが、斬新さばかりが目立ってしまったようで、「梨皮急須」を浸透させるには、かなりの時間を費やした。昭和60年、この「象嵌梨皮急須」が日本クラフト展で『クラフト賞』を受賞した。今では「梨皮急須」は水野さんの代名詞となっている。
 他にも薄墨色の「櫛目急須」を手がけている。土が乾燥しないうちに急須の胴をクシでひっかくことで、糸のような細かい模様ができる。ちょっと手間のかかる作品だ。計算し尽された「櫛目急須」は、ため息ものの美しいフォルムだ。水野さん自身は「陶芸作家になる気もない。職人になる気もない。その中間の人」という。何だか、頑固一徹な職人ととらえてしまいそうだ。実は研究熱心すぎる人だ。胴部分の薄さ、湯切れがいいように斜めにカットした注ぎ口、注ぎ口と取っ手の角度や自分で一つ一つ穴を空けて作る茶こしなど、ひとつひとつが細かく計算されている。本当に価値のあるものを作るには、研究から生まれた情報とセンスを取り込むことだと、水野さんは話す。水野さんの急須は熟練した職人の手仕事の賜物だ。
 どうしたら、おいしいお茶を出せるか―一、水 二、道具 三、出し方という。水野さんはお茶産地に出掛け、お茶農家と親睦を図ったりしている。また、名水探しには余念がなく、週末は各地の名水をくんでくるという。
 本来気兼ねなく楽しめるはずのお茶。お茶の種類や水によって味に違いが出る。バリエーション豊かなお茶をいろいろと試してみようかな…と、思った真夏の暑い日だった。 
(赤井伸衣)