海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 陶芸家という人生は自分が選択したものではなかった。子どもの頃から、陶芸家になりたいという夢をもったこともなかった。物心ついた時には急須に囲まれていた。学生時代のお小遣い稼ぎは、父の作る急須の仕上げの手伝いだったという。高校を卒業後は父に急須作りの手ほどきを受けた。「これは決められた運命だな」と、すんなり受け入れた。そして、今まで、この仕事をやめようと考えることもなかった。チャレンジしがいのある仕事だと自負している。
 工房は資料館に来たような感じだ。棚には急須の口や手などのパーツが日付とグラム数が克明に記入され陳列されている。それが、私には標本のように思えるからだ。これは陽景さんの几帳面で研究熱心な性格が故のことだろう。急須を作る時には、デッサンをして、作る物をロクロの前に置いて作るという。何十年も急須を作り続けていれば、自然と手が体が覚えているのではないかと思うのだが、これには陶芸仲間も苦笑いの様子だ。
 陽景さんの急須は急須らしい急須、正統派の急須の作り方と、その作品には定評がある。素朴な素材を生かし、感情豊かな陽景さんの手にかかれば、細やかな表情まで伝わってくるような急須が生まれる。美しいものを作ろうと思わず、ただただ、自分が一番やりたいことを作ってみたかったという。陽景さんは焼き締め南蛮急須を好んで作陶する。それはとても美しいもので、使えば使うほどに風合いが増してくる。
「おのずからなる、にじみ出た味があり、力があり、美があり、色も匂いもある。」
 いつもこの思いを大切にしている。4日(金)〜13日(日)ギャラリーセピカで、常滑「手作り急須」の会 伝統と創造展を予定している。陽景さんの作品も展示される。なお、この作陶展は「手作り急須」の会によるグループ展である。
(赤井伸衣)