海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 父と同じ道を選んだ。父は朱泥の急須を造る職人だった。幼い頃の遊び場は、父の工房だった。だから、その宿命は幼いながら自覚していたようだ。育った環境のせいか、今の環境が自分に合っている。まんざらでもない仕事だなぁと、思えるようになった。ただ、父と違うところは、北條さんの造る急須が焼締めだということだ。
 北條さんは常滑の山土にこだわっている。常滑の土は熱しにくく、冷めにくい性質をもっている。その性質は紅茶ポットにも最適かなぁと、試作中だ。土の本質を大切にしている作家の一人だ。常滑という土地が育てた美意識が北條さんにも脈々と流れている。常滑の土を採り、土を練り、創作する。常滑の土の荒っぽさは急須の土味を一層引き立たせ、凛とした美しさに目を引く。
 北條さんの創作に駆り立ててきた原動力は、使いやすさ、持ちやすさ、茶切れの良さへの追求だ。茶切れがキュッと上がっている。細やかな心遣いが嬉しい。そして、使えば使うほどに急須の色も変わり、ツヤが増していく。ナチュラルで飾らず、変わらず、ひたすらに自分らしい急須を極め続けた、そのスタイルがカッコいい。「本当に極めた人が造る急須だよね」と、仲間は称賛する。
 陶芸界に飛び込んで40 年余。よく頑張った!!と、振り返る。これからは、次世代に繋げていく役割りを担っていこうと、恩返しをするつもりだ。
 「人が喜んで使ってくれると、やっぱり嬉しいもんだねぇ」と、北條さんは話す。感動を形にする。それが色、素材、形は違っていても、自分が納得すれば、それを押し進める。これが北條さんの心意気だ。
(赤井伸衣)