海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 脱サラで焼き物を始め、40年余りが経った。甚秋さんといえば、高さ5センチ程の平たい急須を作ることで有名な作家だ。急須を平たくすることで、茶葉は重なることなく、煎茶を余すことなく楽しむことができる。
 この平たく胴の低い急須は、甚秋さんにとって頑固に自分のスタイルに固執して生まれた結果である。知人にもっともっと胴の低いものをと、せがまれて本気で取り組んだ。自分の心底にあるものを、自分とじっくり向き合い、作る急須は甚秋さんらしさの象徴そのものだ。
 試験的に作った磁器の湯のみ、赤色のデザインが目を引く焼締の急須と湯のみ、そして使えば使うほどにツヤが増していく朱泥の急須が棚に陳列されている。焼締に赤色、決して派手ではないけれど、どこか主張している。常滑焼を活性化させよう、若い世代にも煎茶を楽しんでもらおうという甚秋さんの想いが、この作風となった。流行を追うのも嫌だけれど、自分らしいスタイルで楽しみたい。甚秋さんのいち押しの作品は、20日(火)〜25日(日)まで常滑屋にて北折義孝さんとの2 人展で見ることができる。
 リーマンショック後、甚秋さんはいろいろな価値観が変化したという。世間は便利さを第一に求めすぎた。今、自分の暮らしを見直す時期ではないかという。一日一日の日常を大切にしていると、自然の力を直に感じ、感動することが多々あると、いう。
 人より飛び抜けた部分がないと、生きていけない。甚秋さんの真っ直ぐに投げかける言葉は、ストレートに私の心に響いてくる。こんな厳しい時代を乗り切るには、本気で基礎をコツコツと取り組めば、そこから何かが生み出されるような気がすると、甚秋さんはいう。まだまだ、甚秋さんは頑張るパワーをもっているはずだ。
(赤井伸衣)