海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 お茶に対する考え方ひとつとっても、加藤さんと私とでは違う。ただただ飲むことを楽しむ私と、時間をかけて煎茶でおもてなしの過程を楽しむ加藤さん。定期的に小学校を訪問し、常滑焼きの急須でおいしいお茶を飲もう!通称「お茶ナビの会」を開いている。時にお茶の先生様≠ニの称号をいただくこともある。この称号は、加藤さんが常滑で育まれてきた伝統に誇りをもって活動してきたからこそ、小学生から贈られた最高の称号なのだ。加藤さんのそういう姿勢は、近い将来きっと、彼らの素敵なお手本になると思う。
 加藤さんにとって、「お茶ナビの会」は毎回、急須でお茶を飲むという伝統のすばらしさを感じると同時に、新たな発見があるという。急須が思った以上に家庭に普及していないことに驚愕した。数カ月前は大学生に「お茶ナビの会」を開いた。加藤さん世代は、伝統は日々の生活の中にたくさんあった。そういう、風潮の中で育った。新茶の季節になれば、新茶の香りも楽しんだ。ペットボトル世代の若者に伝統と日常の生活は違うと、気づかされた。ペットボトル世代には、便利さやモダンなセンスに伝統をブレンドして、「いまふう」をどう伝えていくのかが、今の加藤さんの当面の悩みだという。
 加藤さんの工房は、陶芸サロン的な空間なのだろうか。工房には、よく人が集ってくると聞く。
 現状に満足したら、成長はしないとの意志で、常に陶芸と向き合ってきた。釉薬も独学で覚えた。全ての技法も覚えた。新しいことは勉強熱心さゆえ、挑戦し続けた。相手の要望にこたえることのできる、数少ない職人でもある。
 工房には、要望で作ったと思われる新感覚のゴールドの急須があった。思わず、秀吉の黄金の茶室を思い出してしまう。この急須は華やかな記憶として、私の中にくっきりと刻まれてしまった。
(赤井伸衣)