海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 外は手付かずの自然に囲まれ、緑が広がっている。ここは、なかなか得がたい空間だ。来るだけで、日常のせわしさを忘れて、リラックスできる隠れ家的サロンだ。また、隠居生活にはピッタリのいいとこ取りの工房なのだ。
 本職の教師をしながら、週末はこの隠れ家で作陶していた。退職後は隠れ家に籠り、大好きな陶芸を楽しんでいる。この生活も10年が過ぎた。
 工房は教え子や仲間が集い、人と人をつなぎ、楽しさをもたらす。毎日、何時も笑い声が響いている。
 4棟からなる建物は、小出さんとその仲間たちとで造り上げた。風情ある自慢の家だ。高い天井に囲炉裏、時代を感じさせる梁は昔ばなしの世界にタイムスリップした感覚だ。
 早速、小出さんがお抹茶を点ててくれた。ちょっと薄暗く、肌寒い部屋の中でいただくお抹茶にホッとする。おもてなしをする抹茶茶碗はもちろん、小出さんの自信作である井戸茶碗だ。この井戸茶碗は、どっしりとしていて重厚な印象を受ける。暖かさも伝わってくる。小出さんの茶碗は、私の手にすっぽりと収まり、日々の暮らしに豊かさがあることを、そっと教えてくれた。
 小出さんの師匠は、江崎一生氏だ。江崎氏は常滑出身であり、幻の人間国宝といわれ、鎌倉?室町時代にかけて焼かれた古常滑の灰釉や自然釉の研究に生涯を費やし、古常滑の再現に成功した人物である。江崎氏との出会いは決定的だった。
 この出会いで、小出さんはこの素晴らしい古常滑を継承していかなければという義務感を持ってしまった。本を読みすぎて、幅広い知識を得て、難解な道に迷い込んでしまったことも、少なくなかった。ずいぶんと、お金をつぎ込んでしまった。今、やっと素直に次世代を担う若者に古常滑の素晴らしさを伝えていきたい。自分のもっているもの全てを伝授したいと思うようになった。その役割りを小出さん自身が担っていると、自負している。
(赤井伸衣)