海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 世の中、そんなに寡黙に生きていけるわけがないと思ってしまうけれど、中野さんは信じられないほど寡黙な人だ。でも、私の知らないところで、多弁に生きているんだろうなあ。
 中野さんが陶芸を始めた当時は、陶芸をやっている人は、みんないい車に乗って、いい生活をしていた。その人たちと同じ生き方を目指そうと、生半可な気持ちではなかったけれど、この道に飛び込んだ。しかし、「僕も左うちわ?」という甘い期待は大きく裏切られた。今では、こんな時代になってしまうとは…とショックは隠しきれない。
 中野さんの作品は自分で作った釉薬(白積釉)を用いて、ひび割れに似た模様が特徴だ。この白積釉を用いた作品は数々の陶芸展で入選するなど、目覚ましい活躍を続けてきた。
 この、ひび割れの作品も単純な発想から生まれた。欠点のない、模様もない真っ白な皿を作ったけれど、全く売れなかった。「じゃ、ひびを入れちゃおう」と思い立ち、ひびを入れたところ売れた。だから、全部の作品にひびを入れたという。こう作りたい、こう使ってほしいという思いを込めても、手に取る人にその気持ちが伝わらなければ、何の意味もなくなってしまう。葛藤した時期があったけれども、このひび割れが飽きのこない作品となっている。
 こそっと、教えてくれた。中野さんには25年に及ぶファンクラブが存在する。25年間、陶芸教室が存続している。中野さんの人柄の良さを慕い、生徒も25年間通い続けている。
 焼き物のことしか知らず、今まで過ごしてきた。だから、無趣味。お酒を飲んで、もぐらのような生活だという。
(赤井伸衣)