海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 今、近藤さんには10年間続けている活動がある。それは、デイサービスや老人ホームで月2回行われる利用者向けのリハビリも兼ねての粘土遊び教室の講師を買って出ていることだ。
 人生の年輪を重ねた人たちの作る作品は、どこか温かい。その人が重ねてきた時間の重みを実感する瞬間でもある。そして、粘土を触ったことのない人には、この粘土遊びは新鮮に感じるようだ。年齢を重ねて、いつの間にか、どこかに置いてきてしまったものや夢を好きな物に替えて粘土で表現している。回数を重ねるごとに、どの受講者も気負わず、ありのままに作ってくれる。ずっと、その傍らにいると人との出会いが仕事を繋ぎ、本当に大好きな粘土に一生寄り添うことができる喜びや幸せに気付く。そういうものに囲まれていると、心が満たされる感じだと、近藤さんの言葉がいつもに増して響いて聞こえる。そして、この活動は近藤さんのライフスタイルとして、ずっーと続けていくつもりだという。
 近藤さんはオブジェを得意としている。作品には、人間の手の優秀さや細やかさが表現されている。一般的にヘビはグロテスクで気味悪い。でも、近藤さんの作るヘビはユーモアで茶目っ気いっぱい。グロテスクとユーモアのさじ加減がほどよく絶妙なのだ。だから、支持されるのだと思う。ブタ、ネコ、カエルやイヌといった動物たちの、その表情も実に愛くるしい。どうすれば、こんなにも可愛いものができるのかと、よく聞かれるという。動物園によく通い、人の100倍動物を観察し、作る時に沸いてきたインスピレーションからさっさと、手が動くという。常滑の粘土は、決してきれいとは言えない。リアルに写実的に表現はできない。だから、少しアレンジして、楽しい感じで作ることが必要だという。
 近藤さんにとって粘土は自己表現であって、人生に彩りを加えてくれるもの。近藤さんにとって幸せのベースなのだ。そして、幸運だったことは、伝統工芸士である義和さんの理解と応援に恵まれたことだ。「もし、義和さんに出逢っていなかったら、粘土に興味をもたなかったかも…」と、ふふふっと近藤さんは笑う。
(赤井伸衣)