海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 桜は白色や淡紅色から濃紅色の花を咲かせる。華麗なヤマユリの花がついに咲いたと、心を躍らせる。真っ白な花と茎の緑に初夏の訪れを思わせる。水面に浮かぶ赤色、黄色や褐色の鮮やかな紅葉に夕暮れ時に似た人恋しさを重ねる。そして、葉の散った木々に寂しさを感じたりもする。こうして、愛犬と出掛ける2時間の散歩は村田さんの日課となっている。この散歩では必ず実行していることがある。木々や花に話し掛けることだ。そのおかげか、木々や花は村田さんを一年中楽しませてくれる。こうして、観察をしていると、花が咲くまでに気づくことがある。花も美しいけれど、葉だけでもまた美しいということだ。力強い葉は、それだけでも美しい。
 実家は招き猫や福助人形を作っていた。村田さんの仕事は、これらの顔に加飾をすることだった。村田さんは、この緻密な仕事が好きだった。飽きなかった。細かい仕事が得意な村田さんが次に追求したものが、急須に彫りを入れ、加飾することだった。加飾を施していない急須は、素っ気なかったりもする。でも、それはそれで美しい。素っ気ない急須に温かみのある加飾を施してみたら、もっと温かみが増すのでは…と、思い始めた。ここで図案の参考となるものは、日々の日課となっている散歩で出合う木々や花だ。急須と対話して、出合った木々や花と対話して、加飾していく。彫りを入れて、赤色、白色、青色や緑色などで彩色する。加飾職人として加飾した急須や湯呑みを、大切に使ってもらえるように想いを込めて作っている。
 「久々のイイ感じのものが出来たよ」と見せてくれたものは、今までの温かみを感じる絵柄とは正反対のゼブラ柄の急須だった。何をおいてもヒョウ柄は女性に根強い人気があるというから、ゼブラ柄も心の奥底にジワッと訴えかける何かがあるのかなぁ…と、私は思ったりもする。
 村田さんは、平成21年・春の叙勲「瑞宝単光章」を受章という嬉しい驚きのニュースがあった。ずしりと重い受章だった。加飾も作り手の足跡や想いがあらわれるものなんだということを、再認識する機会でもあったという。
(赤井伸衣)