海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 勝旨窯は1992年に常滑で独立築窯。20年が過ぎた。
 陶芸家として茶器・花器・食器は王道だと、中野さんはいう。また、ライバルが多すぎるともいう。そこで、勝旨窯自慢の作品といえば、取り組んで3年目になる金魚の水槽だ。陶器に硬化アクリルを固定し、貼り付けるという、難しい工程がある。もちろん、全てが手作業で非常に手間がかかっていることは、充分わかる。硬化アクリルを固定した接着剤が少々、粗雑に思えるところが残念だと思う。しかし、出来映えは安定感抜群で、堂々とした風合いのある水槽となっている。その中で、気持ちよさそうに泳ぐ、金魚は何とも優雅な姿だ。
 他には、納豆鉢が自信作という。これも、よく売れたんだよと、いう。
 中野さんがこの世界に入ったのは、20歳の時。叔父は、焼き物に携わる職人だった。少年の頃から、叔父の仕事を間近で見て育った。だから、焼き物に携わることは、ごく自然な成り行きだった。
 問屋からの注文を受け、ぼちぼち作る仕事のやり方から、3 年程前から独自のやり方で商売し始めた。イベントでは1 ブースを借り、作品のキャッチコピーを自分で考えて、自分の作品は自分で売るというスタイルだ。目の前のお客さんの顔が間近で、左右隣りとも密着という、味わったことのない人との距離感に最初は慣れなかった。けれども、すぐに居心地がよくなって、今ではイベントを楽しんでいる。売り上げは年々、右肩上がりという、喜びもある。もう少し、豊かになりたいなぁ…と、本音も語ってくれた。
 中野さんは、今回イベント会場で出逢った同業者と親しくなった。少し、愚痴のようにも聞こえる中野さんの返答に、同業者は優しくヒントを教えてくれた。作品のランクをワンランク上のものにする努力を惜しまないこと。自分にしか出来ないものを作ること。同業者の全ての言葉が温かく感じたという。今後は、このヒントを元に作品に磨きをかけて、自分とじっくり向き合ってみようと思っているようだ。
(赤井伸衣)