海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 来日して20年になる。日本語がわからず、日本に来た。初めて覚えた日本語は、「はじめまして」。日本語の発音は難しく、発音できるまでに1週間かかったという。今では、日本人よりも気持ちのいい日本語を話す。
 ピーターは母国のイギリスで定期的に個展を開き、イギリスの偉大な陶芸家・画家・デザイナーであったバーナード・リーチの工房でワークショップを開いている。そこは、世界中から様々な人たちが訪ねてくる。リーチはイギリスでの陶芸の地位を確立した人であり、ピーターもリーチの功績に大きな感銘を受けた。
 ピーターにとって、いちばん怖いものは慣れてしまうこと。慣れてしまうと、小さな感動や、素敵なもの≠ノも気付かなくなってしまう。だから、人との出逢いは宝物だという。陶芸を通して、様々な人たちに出逢い、交流し、人からエネルギーをもらう。出合ったものを受け入れて、それを楽しんでいる。ピーターにとって、出逢う人々、出合うものすべてがインスピレーションの源という。頭の中では、次に作るものがイメージできる。人との出逢いが自分を高める活力になっている。
 ピーターの作品の中で、まき窯で焼いた手桶の花器に目を引く。そして、素朴な印象を受ける。この手桶の花器に秋の七草を生けてみる。相性の良さは抜群だ。シンプルだけれども、日本の風情が感じられる。この花器は、イギリスでも大好評と聞く。
 昨年、故郷のイギリスに帰ったときには、バスの乗り方もわからず、銀行へ行ってもお金のおろし方もわからず、苦慮したと話す。もう、すっかり日本に溶け込んでいる。生活の基盤は陶芸家と英会話講師の2足のわらじだ。仕事も軌道に乗せた。休日はパンを焼いてみたり、燻製を作ってみたりと、自前のビールで趣味の料理を楽しんでいる。
 久しぶりに会ったピーターは随分と年齢を重ねていたように見えた。シャツの胸ポケットから無造作に出したメガネに失礼ながら「老眼鏡?」と、思わず言ってしまう。久しぶりに会っても、まっすぐな純粋さと落ち着きさを感じさせられ、昔のままでホッとしてしまった。飾らず、変わらずにずっと素敵。年齢を重ねても、ピーターはどこかカッコよすぎ。
(赤井伸衣)