海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 工房は伊勢湾が一望できる高台にある。誰も訪ねてくることはないなぁーと、吉川さんは言う。久しぶりに人が訪ねてきたのか、実に楽しそうに雑談には応じてくれた。
 父が始めた急須職人の仕事を引き継いだ。仕事は注文をもらい、相手の言われたものをコ・ ・・・ツコツと作っている。とても地味な仕事だ。だから、自分でこういう物が作りたいというものはないという。吉川さんが作った急須に兄が彫りを入れて、急須が完成する。
 そもそも、吉川さんが何故、この急須職人という仕事を選んだかというと、中学生の頃からろくろと土は遊び道具だった。中学を卒業する頃には、ろくろも引け、急須も作れた。家業だから自由もきく。サラリーマンで先輩に頭を下げるのも嫌だった。手っ取り早くお金を稼ぐ方法は急須しかなかった。中学卒業後、そんな思いでこの道に飛び込んだ。朝起きると父はいつも仕事をしていた。吉川さんが夜遊びしても、何も言わなかった。父は、吉川さんに急須作りの手解きを何もしなかった。
 毎日、職人として注文をこなしているという。特徴のない普通の急須を作っているという。特別なことをやっているわけでもなく、やっていることは今も昔も変わらない。これに対して、何のこだわりもないという。
 この変哲もない生活も、結構快適ではあるようだけれど、居心地は悪そうだなぁ…と、思ってしまう。話しているうちに、返ってくる言葉が次第にネガティブに感じてしまったので、いろいろと聞こうと思ったけれども、やめておくことにした。
 週一回の卓球を今は、すごく楽しみにしている。
(赤井伸衣)