海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 白のコットンTシャツにパンツ、カジュアルに着心地のよいスタイルだけでも充分素敵だけれど、プラス、おしゃれ心をくすぐるバッグがあれば、なお素敵。持ち手に気が利いた布をあしらった一閑張のバッグで、いつもと違ったおしゃれを楽しんでみる。この夏はそれだけで充分そうだ。
 一閑張とは飛来一閑が伝え広めた技術であり、竹で編んだ?や籠に和紙を貼り重ね、柿渋を塗り重ねたもので、防水や防虫など防腐効果があるという。その趣きや風合いもさまざまだ。
 千家十職の一つである一閑張は棗や香合に用いられ、吉田さんは茶道を習っていたこともあり、一閑張との出合いはかれこれ半世紀になる。結婚して転勤の多いご主人に付いて各地を回った。そこで、趣味で一閑張をしていたご婦人に出合い、教えてもらった。でも、やっぱり、基本から学び、きちんとした、一閑張を知ってみたかった。そして、偶然の出合いがあり、14代家元一閑の個展があることを知り、直直に弟子入りを懇願してみた。家元の「一人前になるには10年かかりますよ」の言葉に「よーし、やるぞ。苦労も努力も何でも楽しんでみよう」という気持ちが湧いてきたという。やっと見つけた、夢が叶ったような、感激にも似た気持ちだった。ずいぶん長い間感じえなかった、この気持ちは今でも深い感動を覚えている。
 一閑張のバッグや道具は、日常生活の中で使い込まれて、自然に朽ちたり、風化したりしていく。歴史を刻んでいく、その姿がとても愛おしいという。作られた時代やデザインも、すんなりとなじんでしまう一閑張は、色彩のトーンを抑えているから。一閑張のバッグに眩しいばかりの光とそよ風が自然と一体となって、バッグに息吹を感じさせる。伝統的なスタンダードなものがもつよさを強く感じることができる。そして、吉田さんの作る一閑張がいいものだから、スタンダードとして伝統として、四半世紀、いや、それ以上受け継がれていくのだろう。吉田さんの一閑張は見るたびに奥深い表情を見せてくれる。見れば見るほどに欲しくなる、そんなふうに思うもののようだ。
一閑の6カ条を吉田さんが教えてくれた。一、四十になるまで己の作品を世に問うてはならぬ一、品格のある作品を作れ一、作品は小手先で作るものではない己を磨け一、物を大切にできぬ者は人も大切にできぬ人を大切にできぬ者は物も大切にできぬ一、地位名誉を追うべからず人となりを見るべしさすれば自ずと道は開けん一、血筋にこだわるべからず技術を以て引き継ぐを旨とすべしいかなる月日が流れしも人の心は永久に変わらん
(赤井伸衣)