海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 開け放たれた扉からは、小学生の楽しそうな声が響いてくる。工房の前は小学生の通学路となっているため、本当によく聞こえる小学生たちの声に庄山さんは、目を細めている。時を重ねて辿りついた今の工房に、四年前に引っ越してきた。御歳八十六歳。焼き物を始めて60年。今も現役でロクロを回す。土遊びをしながら、仕事をしている。自由に気楽に陶作し、暮らしている。
 常滑には気取らない居心地のよさがあった。近頃、常滑の町にも観光客が増えてきたと、庄山さんは実感している。観光客は増えても、庄山さんの工房を訪ねてくる人は少なく、作品は全く売れないと、ため息まじりに話す。観光客に問いかける何かが欲しいと模索しているが、一向にアイデアが浮かばないとも。
 常滑焼の職人が庄山さんの人生にいい影響を与えたように、誰かの心に響くような作品を作りたいという思いで作陶してきた。灰釉の緑は日本人は好きだからと、たくさん作った。それらは、どれひとつとして同じものはない。それぞれ違う表情の焼き締めのカップや花瓶。愛嬌いっぱいのカエルのオブジェや心温まるお地蔵さん。好きなものを作りたいから、ずっと作り続けていた。庄山さんとして積み重ねてきたものが、工房にずらっと並べられている。今となれば、好きなことをやれていることに感謝していると、庄山さんはいう。
 自分が本当にやりたいことに力を注いできた。今は陶芸に囲まれた心地のよい生活に満足はしていないが、運に恵まれたという。ここまで来るのに周囲の人たちの温かい支えがあった。背中を押してもらうこともあった。風化していくものもあり、時代は変わってしまったけれど、歴史を刻んでいる、そんな空間が今の生活にはあるようだ。
 庄山さんは、とてもポジティブな人。二年先までの作陶展の予定が定期的に決まっている。
 趣味は書道。
(赤井伸衣)