海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 寒気の中にも早春の息吹が感じられる暖かな日に、山本室香さんを訪ねてみた。店内は女の子の幸せを祈り健やかな成長を願っているように、室香さんの大好きな陶雛で飾られていた。「どの陶雛もお顔が可愛いのだけど、陶雛に限っては屏風も陶器で出来てるのはないのよね。人形も屏風があって完成するのよ」と室香さんはいう。室香さんは、この屏風にかつてない衝撃を受けたようだ。陶雛には古典的なしっかりとしたお顔の男雛と女雛、少し抽象的なものや、現代的にアレンジしたものなど、かしこまりすぎない雰囲気で楽しめるものばかりだった。
 これらの陶雛を作り続けている人は、室香さんのお店のオープン以来の付き合いとなる滝上真由美さんという陶人形作家という。この陶雛は誰にもどこにも似ていない存在感があるようだ。
 そのスタイルがカッコいい五月人形は、室香さんが常にアンテナを張り、作家とコミュニケーションをとりながら作ったという全てがオーダーメイドの魅力的なものだけれども、特に五月人形のお顔に関しては凛々しさよりも可愛らしさを全面に表現してもらったという。可愛らしさというスパイスが効いて、出来上がった人形は、知性をもった育ちのよい元気な男の子という感じを受ける。その誕生の背景にあるストーリーを知ると、よけいに愛らしくなってくる。
 このお店をオープンして24年。オープン時から今まで滝上真由美さんの陶人形展は開いてきた。室香さんは「私のライフワーク。私の積み重ねてきたもの」と、いう。毎年、室香さんは小躍りするような気持ちで滝上さんの作品を見てきた。室香さんにとって、滝上さんの陶雛は夢のある特別なもの。並んでいるだけで気分も上がる。自分に幸せを運んでくれるもの。その気持ちが自分に輝きをくれる。存在そのものがスペシャルという。女性は美しいもの、可愛いものを見た瞬間、笑顔に変わってくるようだ。そして、娘や孫に購入していく人たちをたくさん見てきた。オープン時、10年前、現在と、時代も変わり、ライフスタイルも変わった。陶雛や五月人形を飾る伝統や習慣も薄れてきた。室香さんはとても残念と、淋しさを隠しきれない。
 室香さんの大好きな陶雛を広めていく姿勢は24年前、現在、今後と変わらないという。大好きな陶雛を広めていくことを今後も続けていきたいと、話す。
 室香さんを訪ねて、どこかに忘れてきたような懐かしさを感じた。そういえば、私もいつのころからか、雛人形を飾ることもなくなったなぁ…。知人のご婦人は毎年、飾っていると聞いた。今から、思い出とともに飾ってみようかなぁ… と、心の中で呟いた。
(赤井伸衣)